TidBITS#778/02-May-05 ===================== Mac OS X 10.4 がやってきた。この特別増量の TidBITS では、私たちのス ポットライトで Tiger の新機能を照らし出したい。最初は、Adam が「あなた はアップグレードすべきか?」という質問を投げかける。Joe Kissell はイン ストールのプロセスをレビューする。次に、Glenn Fleishman と一緒に Spotlight を観察し、それがどのようにデータとのつきあい方を変えるのかを 掘り下げ、Matt Neuburg が Dashboard と Automator をレビューする。さら に、より高速になった Power Mac G5 モデルと低価格になった二つの Apple Cinema Display についてもお報せする。 記事: MailBITS/02-May-05 Tiger と目と目が合って Tiger のインストール手順を点検する Spotlight にスポットライトを Dashboard のご紹介 Automator を紹介します Take Control ニュース/02-May-05 TidBITS Talk/02-May-05 のホットな話題 (日本語) Copyright 2005 TidBITS: Reuse governed by Creative Commons license Contact: --------------------------------------------------------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: * 読者のみなさん! あなたのカンパで TidBITS を応援してみませんか? <-- NEW! 今週は Michael Dwyer 氏、Anthony Sykes 氏、 Gilles Moise 氏と Chris Engst 氏の暖かい支援に感謝! * SMALL DOG ELECTRONICS: LaCie Drives <------------------------------ NEW! 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Engst 訳: 羽鳥公士郎 さて、ついに、Tiger が発売された。ようやく、鳴り物入りの機能について当 て推量することもなくなった。それどころでなく、私たちは Tiger をさまざ まな側面からじっくり眺めているのだ。今週号の残りすべてを使って、またこ れからの号の多くの記事もそうなるに違いないが、私たちは、何が新しくな り、それにはどんな意味があり、どう機能するのかということについて書こう と思う。たとえば今週は、アップグレードの手順、Dashboard、Automator、 Spotlight についての記事をお届けする。 しかし、TidBITS の中で、読者が望むような、Tiger に値するほど細部にわ たった情報をお届けすることはできない。そのためにこそ Take Control 電子 ブックがあるのだ。これは、Tiger へのアップグレード、Tiger のカスタマイ ズ、Tiger でのユーザとアカウント、Tiger での(ほかの Mac や別のプラッ トフォームとの)ファイル共有についての、丹精を込めて調べられ、読みやす く編集された、350 ページを越えるアドバイスだ。この電子ブックにはよい点 が多い。安いし、いかなるコピープロテクトもかかっていない。無料でアップ デートできるし、今すぐ手に入る。Tiger についてのほかの本が現れる何週間 も何か月も前に。Tonya と私は、Joe Kissell、Matt Neuburg、Kirk McElhearn、Glenn Fleishman と共に、何か月も身を粉にして働き、4冊の電 子ブックすべてを Tiger と同時に販売したのだ(海外から予約をしてくれた かたがたのためにつけ加えると、私たちは電子ブックを世界中どこでも現地時 間で 4 月 29 日の午後 6 時に出荷した)。 (日本語) "Take Control Ebooks: あなたの知りたいことがすぐわかる" しかし、ここで TidBITS の記事を始めるにあたって、これまでに電子ブック をお買い上げくださった数千人のかたがたには思いもつかなかっただろう質問 について考えたい。あなたはアップグレードするべきなのだろうか、するべき だとすれば、いつ? もしあなたが、いつアップグレードするか迷っているな ら、あなたが以下の範疇のいずれかにあてはまるかどうか考えてみるのもよい だろう。 **趣味人** -- Macintosh を趣味だと思っている人の多くは、すでにアップグ レードすることにしているだろう。もしそうでないなら、Tiger を注文するこ とをお勧めする。オペレーティングシステムが新しいバージョンになるという ことは、新しいおもちゃ、探検するべき新しい機能、そして友人とのおしゃべ りのための無限に近い話題が手に入るということだ。もしもあなたが、自分の ことを Macintosh 趣味人だと自認するなら、すぐにアップグレードすること をお勧めする。そうしてはじめて、この一族の一員であるという意識を持ち続 けることができるというものだ。 (日本語) "アップル - Mac OS X - 概要" **ファイリング障碍者** -- もしあなたが、Mac でファイルをよく無くすな ら、Tiger の Spotlight 技術があなたの新しい親友となるだろう。さらに言 うなら、Spotlight は、書類をどこにファイルしたらよいか分からなくなった ことのある人や、精密な階層ファイルシステムというものがあまり理解できず に、すべてをデスクトップに保存している人すべてにとって助けになるだろ う。あなたが「それを置いたのはあれの隣のあれの上だよ」などと言うような 人なら、Spotlight がファイリングのアナロジーという人工的なものを一掃す るので、たとえば「誰に向けてその手紙を書いたのか? それを書いたのはいつ か? なんと書いたか?」というようなことで、概念的に検索することができる ようになる。私のお勧めは、今すぐアップグレードすることだ。そうすれば、 あなたのハードディスクの暗黒の秩序に、少なくともいくばくかの光を当てる ことができる。 (日本語) "アップル - Mac OS X - Spotlight" **スクリプタ** -- 多くの人は Mac を手動で使っているだけだが、コン ピュータの素晴らしい使用法の1つは繰り返しの作業を自動化することだとい うことを理解している人もいる。そういう人たちは、QuicKeys、iKey、 Keyboard Maestro といったマクロユーティリティを長く使い、その多くはさ らに進んで AppleScript を学んでいる。あなたがこの範疇に入るなら、あな たの自動化道具箱に次に加えるべきものは Automator だ。これはスクリプ ティングを越えて、たくさんのアプリケーションを操り人形のように行進させ ることなく作業を自動化するための視覚的なインターフェースを提供する。 Automator が提供する可能性は、そのすべてがサードパーティーの開発者に よって完全に実現されるまでには少し時間がかかるにせよ、これらの人々に とって比較的早期にアップグレードする理由になるだろうと思う。 (日本語) "アップル - Mac OS X - Automator" **短期注意型** -- ちょっと待って、すぐに調べたいことがある。そう、今週 私が旅行する Albuquerque と Santa Fe 地区の天気予報はよさそうだ。で は、執筆に戻るとしよう。もしあなたが、私のように、何かをちょっと調べた り小さなユーティリティを使ったりすることが多いなら(ちょっと失礼、現在 の天気をオーストラリアの友人に説明するのに、華氏を摂氏に変換しない と)Dashboard とウィジェットの山は、アップグレードするためのよい理由と なる。とはいえ、Konfabulator のおかげで、Tiger の Dashboard ウィジェッ トでできることのほとんどが Panther でも利用できないとしても私は驚かな い。だから、Dashboard のためだけに、すぐにアップグレードする必要はない だろう。 (日本語) "アップル - Mac OS X - Dashboard" **締め切り駆動型** -- この範疇に入る人のほとんどは、仕事を終えるために あくせく働いており、早い時期にアップグレードするべきだと言ったら、正直 に言って押し売りということになる。その理由は単純だ。そういう人は、 Microsoft Word や Adobe Photoshop といったものに深く依存しており、オペ レーティングシステムの機能が日々の仕事に影響を与えることはほとんどな い。また、Tiger をインストールしたり、新しい機能に慣れたりするのに時間 を割くというのは非現実的だ。もしあなたがこのような働きバチの1人なら、 アップグレードを勧めはするが、それは Apple がいくつかのマイナーアップ デートをリリースして、初期の問題を払拭してからの話だ。そして、Tiger を インストールして、新しい機能に親しむための時間を費やすはっきりした機会 を得るまでは、アップグレードするべきではない。 **旧弊家** -- 「壊れていないなら修理するな」があなたのモットーで、 Panther が特別壊れているわけでもないなら、あなたはアップグレードするべ きだとはいわないが、今後 12 か月か 18 か月のあいだに、Spotlight や Automator、Dashboard を面白い仕方で利用した新しいアプリケーションが登 場するだろう。そういう見込みが魅力的に思えたなら、その時点でアップグ レードするというのは意味がある。加えて、来年あたりに新しい Mac を買え ば、Tiger がプレインストールされているだろうから、それまでアップグレー ドを控えてもよいだろう。 **Tiger の詳細** -- Apple から最初に発表された詳細を要約すると、Tiger のシングルユーザライセンスは 130 ドル(14,800 円)で、5ユーザライセン スの Mac OS X Tiger ファミリーパックは 200 ドル(22,800 円)だ。2005 年 4 月 12 日以降に新しい Mac を買った人は、Mac OS Up-To-Dateアップグ レードパッケージを 10 ドル(1,980 円)で購入できる(これは2005 年 7 月 22 日まで提供される)。Take Control 電子ブックに、TidBITSのスポンサー である Small Dog Electronics のすべての注文に使える 5 ドル分のクーポン がついていることもお忘れなく。もちろんこれは Tiger の購入にも有効だ。 (日本語) "アップル - Mac OS X - Up-To-Dateプログラム" (日本語) "Mac OS X 10.4 Tiger のリリースが 29-Apr-05 に" Tiger には最低でも 256 MB の RAM が必要だ(しかし、少なくとも 512 MBを インストールしていただきたい)。PowerPC G3、G4、G5 プロセッサと内蔵の FireWire を備えたすべての Macintosh で動く。 Tiger は DVD メディアによる販売のみとなる。もしあなたの Mac が、そのほ かの点では適合しているのに、CD ドライブだけしか備えていないというな ら、あなたの Mac を FireWire ターゲットディスクモードで起動して、DVDを 備えたほかの Mac からインストールするか、Apple に 10 ドル(それに加え てあなたの地域での消費税: 日本では税込み 1,980 円)を払って Tiger のCD セットを手に入れることもできる。CD セットを注文するには、下記のリンク から PDF をダウンロードして、支払い方法と、購入証明クーポン、そしてオ リジナルの Tiger DVD を同封して送る。Apple が言うには、在庫があれば、 注文を受け取ってから 24 時間以内に CD を発送するそうだが、郵送のみにな るという。だから、注文を郵送してからディスクを受け取るまで、Appleに在 庫があるとして、2週間から3週間かかるかもしれない。 (日本語) Tiger のインストール手順を点検する ---------------------------------- 文: Joe Kissell 訳: Mark Nagata 初めてプレリリース版の Tiger をインストールしてみた時、私は心配になっ た。きっとたいていの人は、インストール後に自分のマシンがきちんと動かな くなったらどうしょうと思って心配になるのだろうが、私の場合は全く違った 心配だった。それは、もしもこの作業が何の問題もなく終わるようなら、いっ たい誰がアップグレードについての私の電子ブックを買いたい気になるだろう か、という心配だ。明らかに Apple はかなりの注意を払ってこのインストー ラを作ったようだ。この Tiger のインストーラはこれまでのどのバージョン の Mac OS X のものよりもはるかに優れている。ユーザーとしては、私は最高 に嬉しかった。でも著者としては、それほど嬉しさも感じなかった。 さて、その後 43 回ほどのインストールを(また今後も回数は増えるだろう が)重ねてみて、私の喜びも、私の心配も、今はどちらもそれなりに中程度の ものに落ち着いている。私はこのインストーラも、その信頼できる相棒たる設 定アシスタントも、どちらもかなり細かい点まで知り尽くすに至った。Tiger のインストール作業はいろいろな快い驚きに満ちていたが、私が胸をなで下ろ したのは(いやいや、残念に思ったのは)それでもやはりたくさんの興味深い 問題点や疑問点が残っていることで、そういう点についての専門家の手引きを 私の新しい電子ブック“Take Control of Upgrading to Tiger”という形で $5 を払って手に入れていただける価値は充分にあるだろうと思う。 **Tiger メディア** -- 最初の驚きは、Adam の記事でも触れられたように、 Tiger が DVD のみで出荷されていることだ。CD ベースのインストーラを入手 するには、Tiger DVD を Apple へ $10 を添えて返送し、別パッケージが郵送 されてくるのを待つしかない。すべてのインストーラが(Xcode Tools も含 め)一つのディスクに全部まとめられているのはシンプルで良いし、これでイ ンストール作業もずっと手早く済ませられ、紛失したり混乱させられたりする 可能性も減るだろう。けれども、DVD リーダーが付いていないだけでそれ以外 の点では Tiger 互換であるようなマシンを持っている人にとっては、納得で きないことだと言わざるを得ないだろう。 **インストール方法いろいろ** -- Mac OS X が既にインストールされている 上にアップグレードする場合は、以前からと同様にインストーラが三通りのイ ンストール方法を提供する。「アップグレード」「アーカイブしてからインス トール」それに「消去してからインストール」の三つだ。私は、これら三つの 方法をさまざまの状況下で何度も試してみた。デフォルトの選択肢である 「アップグレード」は一般的に言って信頼できるが、他の二つの方法のどちら かを使った方が、ずっとクリーンな(かつディスク容量も食わない)システム を作れる。以前私は、たいていの人に「アーカイブしてからインストール」の 方が勧められると述べていた。なぜなら、その方法が「アップグレード」の簡 単さと「消去してからインストール」の堅牢性との中庸を提供していたから だ。私は、今回も同じアドバイスを繰り返すようになる(他の数々の Mac ウェブサイトでも同様だった)だろうと思い込んでいた。でも、違った。これ は私にも意外だったことだが、今回は「消去してからインストール」の方が (本当に正しいやり方で実行したら、という条件付きだが)ずっと手早く、よ り効果的に、しかもより安全に、あなたが以前から持っているものを新しいシ ステムに取り入れることのできる方法と言えることがわかった。ただし、しっ かりしたバックアップがとってあることが絶対条件だ。あなたのハードディス クを消去する前に、必ず少なくとも一つ、できれば二つの、バックアップを用 意しておくことを皆さんに強くお勧めしておきたい。信頼できるバックアップ を作るにはどうすればよいか知りたいとおっしゃる方は、私のもう一冊の電子 ブック“Take Control of Mac OS Backups”をどうぞご覧いただきたい。 この新しい考え方のための鍵となるのが、移行アシスタント(古い Mac から 新しい Mac へとファイルを移動させるために Apple が提供しているものと同 じツール)だ。このプログラムを別途走らせる必要はない。その能力のすべて は設定アシスタントの中に「ファイル転送」という名前の下で統合されてい る。「消去してからインストール」を実行した後で再起動すると、設定アシス タントがあなたのファイルや各種設定を別の Mac あるいはパーティションか らコピーするかどうか尋ねてくる。あなたが古いシステムのブート可能なコ ピーを別パーティションに、あるいは(こちらの方が望ましいが)第二内蔵 ディスクまたは外付けのハードディスクにちゃんと残してある限り、移行アシ スタントは非常に巧みなやり方であなたの古いファイルを Tiger の中に取り 込んでくれる。もちろんこれは完璧とは言えない。いくつかのファイルは手で コピーしたり、あるいは再インストールしたりする必要があるかもしれない。 それでも、あなたがしなければならない余分の手作業の量は「アーカイブして からインストール」を使う場合に比べてこちらの方法の方がはるかに少なくて 済むし、作業に伴う精神的な圧迫感もずっと少ない。ファイルの復旧に関する 細かいことはすべて、“Take Control of Upgrading to Tiger”の中で(両方 ともの方法について)説明しておいた。 **追加のソフトウェア** -- インストールに際しては、いくつかの追加のソフ トウェアパッケージを取捨選択することができる。私の感覚では、Apple の選 んだデフォルトの選択肢はかなり奇妙なものに思える。例えば言語翻訳関係の ものが、1 GB 以上も必要であるのにすべてデフォルトでオンになっている。 でも、Mac OS X を複数の言語で使いたい人々は比較的少数だろうし、利用可 能な言語すべてを使いこなせる人などほとんどいないだろう。全般的に、選択 できるオプションの種類は Panther と比べて少なくなっている。例えば、BSD Subsystem は従来のバージョンの Mac OS X では選択肢に入っていたが、今回 はこれをオフにすることができなくなっている。(これは良いことだ。たくさ んのサードパーティのアプリケーションがこれに依存しているのだから。) **インストールの後は** -- インストールが終わったら、設定アシスタントが いつも通りに現われて、ユーザ名とパスワードを(必要ならば)選択し、.Mac アカウントを(持っているならば)設定し、Apple にユーザ登録し、といった 作業にあなたを導いてくれる。この部分の作業手順は、従来よりもかなりすっ きりしたように思える。しかしながら、その次の再起動の際に、ファイルのア クセス権関係の必要条件が変更された影響でいくつかの重要な起動項目が使え なくなっているという現象に遭遇するかもしれない。これらの項目のアクセス 権設定が自動的に修正されるようになっていたらもっと親切だっただろうにと 思う。少なくとも、Tiger の最初の起動の時点で、それらの項目が使用できな いことと、なぜそれらが利用不可になったかの理由を表示してくれるようには なって欲しいと思う。 **細かな問題点** -- この Tiger インストーラはかなり改良されているとは いえ、まだまだもっと利口な挙動をして欲しいところもある。例えば、「アッ プグレード」と「アーカイブしてからインストール」(その後に「ファイル転 送」を実行した場合)の両方とも、あなたのログイン項目(従来は起動項目と 呼ばれていたもの)をすべてそのままに残してしまう。けれども、そういう項 目の中には Tiger と互換性のない古いアプリケーションを指していて、その ままでは問題を起こしてしまうものもあった。インストーラがこれらの項目を 不使用にしておいて、ユーザーが簡単にそれらを一つ一つオンに戻せる手段を 提供する、というのがより賢明な方策と言えるだろう。また、「ファイル転 送」はいくつかのアプリケーションと環境設定パネルを新しいシステムに移し てくれるが、それらがしばしば依存することのあるカーネル機能拡張について は移してくれない。その結果、ソフトウェアが半端にインストールされた状態 になってしまって実際には動いてくれず、その原因が何なのか手掛かりも見え ない、ということになる。たしかにインストーラはその種のもののうちいくつ か(例えば Virex など)については親切に警告してくれるが、たいていの場 合は何も警告が出ない。それから、インターフェイスが奇妙に見える個所もい くつかあった。特に設定アシスタントの「ファイル転送」の部分で目立った。 例えば、「パーティション」というのが実は「パーティションまたは外部ハー ドディスク」の意味であることが明らかに見て取れないような表現が見られる し、古いシステムの中からどのコンポーネントを転送すべきか選ぶ画面では、 判断の材料になる情報が充分に提供されていないように思えた。 **あなたも Take Control** -- 全体としては、いくつか不満な点はあるもの の、どちらかと言えばやはりこの Tiger インストーラは暖かくて気持ちの良 い感じを私に与えてくれる。けれどもどうひいき目に見ても、たくさんの疑問 が残されていることは間違いない。アップグレードの前にどんな手順で準備を しておくべきだろうか? 私の場合はどのアップグレード方法が最適なのか? まずハードディスクをパーティション分けしておくべきか? もしそうなら、 どうやってするの? 「アーカイブしてからインストール」の後はどのファイ ルを転送をすればいい? 後になってうまく動かないものが見つかったら、ど うやって対処するのか? こうした疑問や、その他数々の疑問に対する答が、 87 ページある電子ブック“Take Control of Upgrading to Tiger”に詰め込 まれており、アップグレード作業の各段階においてあなたが知っているべきこ とのすべてが詳しく説明されている。今後新たな情報が判明するに従い、電子 ブックの無料アップデートも出していく予定だ。 Spotlight にスポットライトを ---------------------------- 文: Glenn Fleishman 訳: Mark Nagata Spotlight について詳しく書いてみたい。Spotlight は Tiger の呼び物の機 能の一つで、これまでは時間のかかる面倒な作業だったシステムワイドな検索 を、誰にでも抵抗なく仕事の流れの一部として効率的に取り入れることのでき るものに変えている。実際、Spotlight はあまりにも見事に動作するので、ゆ くゆくは電子メールやファイル、その他のデータなどをファイリングするとい う概念が消滅してしまうのではないかと思えるほどだ。でも今はまだその段階 までには達していない。 Spotlight の全般的な機能については以下にいろいろと説明してある。どんな ファイルからでも素早くどんなテキストも見つけられるし、システム環境設定 の中のメニューを特定するために使うこともできる。以下では、まず最初に Spotlight がどんな風に働くのかの概要を簡単に説明し、その後で他ではなか なか聞けないかもしれないような細かい分野について分け入ってみたい。それ から締めくくりとして、自分が作り出したものの上にわざわざ整理の手を加え なければならないという厄介事から、Spotlight がいかにして私たちを救い出 してくれるのかについて考察してみよう。 **Spotlight を一言で言うと** -- Spotlight のアプローチはごくシンプル だ。すべてが高速かつ効率的に索引化され、しかもそれが常時進行でおこなわ れる。Tiger をインストールして再起動すると、このオペレーティングシステ ムがまず最初にする仕事が、あなたのハードディスクを索引付けすることなの だ。私は何度もテストのインストールを繰り返したが、実際この索引付けが働 いていることに気付きさえしなかった。ただ、何人かのユーザーはマシンのプ ロセッサパワーが 50% はこの仕事に振り分けられていると報告しているよう だ。この初期索引付けが終了するまでは、Spotlight を使うことができない。 ただ、システムメニューバーの右上のところにある青い Spotlight アイコン をクリックすると、この作業が終わるまでにおよそどれくらいの時間が掛かる と Tiger が予想しているかが表示される。虫眼鏡アイコンの真ん中に点が脈 打っていることで、索引付けの作業が進行中であることが示される。 作業が終了すると、Tiger がその後は自動的にあらゆる書類の変更に対して索 引を更新し、あらゆる新規の書類に対してそれを索引に組み込む。これらの作 業も、やはり静かに裏側で進行する。はっきりとお分かりいただけなかった方 のためにもう一度繰り返すと、Spotlight は毎晩決まった時間に全ハードディ スクを再索引付けしたりはしない。一晩中コンピュータをオンにしておかねば ならなかったり、真夜中にいきなりドライブアクセスの騒音をたて始めたりす ることもない。従来にもいろいろの全般的索引付けプログラムはあったし、 Apple も同種の試みをいくつかしてきたが、それら従来のものはすべてその種 のやかましさを要求するものばかりだった。 私はまだ Tiger をストレステストしたことはない。例えば Automator でラン ダムなテキストを含む 1 メガバイトサイズの書類を 1,000 個作らせる、と いったことは試していない。でも、そういうことを試してみれば、きっと Spotlight の常時進行索引付けがどんな風に働くのかの実感が掴めるだろう。 索引のアップデートをファイルシステムのレベルでオペレーティングシステム に統合させることによって、Tiger はローレベルのシステムパッチ(これは常 に危険なことだ)や上記の深夜の再索引付け、あるいは有効なデータを見落と すおそれのあるサブセット索引付けなどをすべて回避している。 Apple はまた、なかなかうまいトリックも達成している。何らかの最適化を索 引に施すことで即座に結果が出るようにし、その結果 Spotlight の検索はあ なたがタイプを始めたその瞬間から動き始める。あなたが検索語をタイプし終 えた頃には、たぶん予想を含めた単語検索をしているのか、あるいはただプロ グラミングが素晴らしいだけなのかはわからないが、たいていの場合検索はも うほとんど終わっているのだ。 私の感じでは、Spotlight は私の 1 GHz 15 インチのアルミニウム PowerBook G4 でも、デュアル 1.25 GHz の Power Mac G4 でも、どちらも信じられない ほどきびきびと動作した。Apple がサポートしている最もローエンドのマシン ではどんな感じになるのか、ぜひ知りたいと思っている。 Spotlight は、右上にあるアイコンをクリックするか、または Command-ス ペースを押すかすることで、いつでも利用できる。また、デフォルトではすべ ての Finder ウィンドウにも現われるし、またこれが一番重要なことだが、 「開く」と「保存」のダイアログボックスにも現われる。開くべきファイルを 探してあちこちナビゲートして回る必要はもうない! どのフォルダにファイ ルを保存すべきかをナビゲートして見つける必要もない! 私は今でも Default Folder が大好きで大切にしているが、今後の私のワークフローの中 での重要性はかなり減っていくだろう。 Apple はコマンドラインからも Spotlight を使えるようにしている。mdls コ マンドで、どんなファイルでもそれに附随したメタデータがわかる。mdfind コマンドの方は、基本的に Spotlight 検索を実行する。 **Spotlight 検索を絞り込む** -- Spotlight はもっと高度な検索がしたいと いう人にもちゃんと応えてくれる。検索語だけでなく、日付・時刻、ファイル 名、その他のメタデータによって対象を制限することができるのだ。メタデー タというのは目的のデータに附随したデータ、例えばファイルの修正時刻、カ メラの絞り値、QuickTime ムービーのフォーマットや長さ、あるいは TIFF 画 像のヘッダに含まれている撮影者の名前、などのことだ。 たいていの場合検索はまずキーワード(検索語)でスタートするが、それで多 数の結果が出てきた時はすぐにその一部分に検索を絞り込みたくなってくるも のだ。Apple は検索の中に何らかの用語法を組み込んだようだが、これはまだ あまり明らかにされていない。つまり、検索を絞り込むために使われる特別の 単語があるらしい。残念なことに、それらの単語は現在のところ Apple のサ イトにも、Tiger リリース版の Spotlight Help の中にも、情報として提供さ れていないようだ。 制限された検索を実験してみることで、ある程度のことはわかる。Spotlight についての Apple のページでは、検索語の後に「日付:昨日」と追加すれば 昨日作成されたファイルだけが検索されると書いてある。昨日作成された画像 ファイルをすべて見つけたければ、「日付:昨日 種類:イメージ」と入力す ればよい。この用語法は、いずれ完全に情報として公開されることだろう。こ のような限定的用語は特に「開く」「保存」のダイアログで便利に使える。そ ういう場所では Spotlight の検索結果が膨大になりがちだからだ。 (日本語) "アップル - Mac OS X - Spotlight" デジタルメディア機器の提供するメタデータがますます豊かなものになってき つつある現在、それを使いこなすことができるというのはとてもありがたいこ とだ。特定の Canon カメラで特定の解像度で撮影した写真だけを検索でき る、それだけでも素晴らしいではないか。これまでは、そういうことをするに は iView Media Pro のようなカタログプログラムが必要で、しかも常にカタ ログを更新しておかなければならなかったのだから。 さて、この種の検索限定アドオンを Apple の秘密の用語法を使わずに利用で きる、もう一つ別の方法がある。それがスマートフォルダだ。 **検索結果をフォルダとして** -- いくつか前のバージョンの Entourage で、Microsoft は疑似メールボックスとして実際は検索パラメータをメール ボックスの形で表示したものを使っていた。残念なことに、膨大な数のメッ セージを扱っている私たちのような者にとっては、当時 Microsoft が使って いた検索エンジンではとても耐えられないほど時間が掛かってしまっていた。 Spotlight はこの考え方を継承して、それをスマートフォルダという形でデス クトップに拡張してみせた。このスマートフォルダとは、本質的にはあなたが 定義した検索パラメータに対応する検索結果をライブでまとめたものだ。 Spotlight の動作速度は充分速いので、あなたの目にはこのスマートフォルダ が動的に保持されているという事実がわからないほどだろう。 それに伴って、Apple は Panther の高度検索機能を Finder から削除した。 Finder の編集メニューから「検索」を選ぶと、新規のスマートフォルダが作 られる。(New Smart Folder コマンドと同じダイアログが使われる)このス マートフォルダはまだ保存されていない。ただの検索語以上に絞り込んだ検索 を始めるには、さきほど説明した未公開の用語法を使う方法もあるが、今述べ ているスマートフォルダを使うこともできる。 スマートフォルダを新たに作った時、デフォルトのパラメータは「種類:制限 なし」「最後に開いた日:制限なし」となっている。検索パラメータの上に は、「サーバ」「コンピュータ」「ホーム」「その他」というボタンが並んで いる。「ホーム」に設定しておけば、検索は現在のユーザのホームディレクト リ内に限定される。私は、Spotlight の能力を最大限に利用するために「コン ピュータ」に設定している。私が書類やその他のファイルを、Apple が推奨し ているように自分のホームディレクトリ内のみに置くのではなく、ハードドラ イブのあちこちに置いているというのも理由の一つだ。(「その他」をクリッ クすれば特定のフォルダやハードドライブを加えたり除外したりできる。) Finder のウィンドウ内でも、Spotlight フィールドに検索語をタイプするだ けでスマートフォルダが作れる。こちらのスマートフォルダには「種類」と 「最後に開いた日」のデフォルト範囲が表示されないが、右上隅の「保存」ボ タンの横にある「+」をクリックすれば条件の追加ができる。 スマートフォルダを使って Spotlight フィールドの内容を混ぜることもでき る。検索語や、検索を制限する条件を入力するフィールドのことだ。どんな検 索条件でも、横にある「+」をクリックすれば条件が追加できる。条件の名前 から出るポップアップメニューで、いくつかあるお気に入りの条件を選択する こともできるし、「その他」を選択してもよい。 この「その他」には、Spotlight のサポートする既成のメタデータがずらりと 並んでいる。例えば、URL を選べばその URL を含む書類がすべて検索され る。「お気に入りに追加」ボックスをチェックしておけば、その属性が条件 ポップアップメニューに登場するようになる。 スマートフォルダの説明が長くなり過ぎたようだが、まだまだ言いたいことは ある。例えば指定した書類カテゴリーについて検索結果のうちトップ5を表示 するか、それともすべての結果を表示するかが選べる。日付や種類でも並べ替 えができる。ファイルの横にある「i」ボタンをクリックすればその情報の要 約が見られる。PDF 書類をその最初のページのサムネール画像で表示できる。 画像も表示できる。その他挙げていけばきりがない。 **ファイリングを考え直す** -- ファイルの整理というのは面倒な作業で、そ もそもコンピュータというのはそういう作業を我々に代わってしてくれるもの だ、そうでしょう? だからこそ、Creo から数年前に Six Degrees というプ ログラムが出た時に私はあんなにも興奮させられたのだった。Six Degrees は Mac と Windows でいくつかの電子メールプログラムと統合され、受取人と メッセージ件名(討論スレッド)と添付書類が互いに三角形の三頂点の関係に 位置していた。つまり、電子メールの世界を回転させて、あなたが誰と通信し たか、話題は何だったか、そしてどんなファイルが関連していたか、のいずれ の点にもウィンドウ表示の中心を合わせることができた。(この製品はその後 Ralston Technology Group に売却され、現在は Clarity という名前で販売さ れている。) この考え方はささやかなものではあったが、重大な目標を含んでいた。 Spotlight はこれをさらに、はるかに超えて拡張することになる。Six Degrees は、電子メールのメッセージをどのメールボックスに保存するか、 ファイルをどのフォルダに入れるべきかという判断をしなくてもよい状態に、 人々を解放しようとしていた。 まだ現時点では、Spotlight がすべての障壁を取り壊して、一つの巨大な電子 メールフォルダにすべてのメッセージを入れてよいようにしたり、私たちが 作ったり受け取ったりするすべてのファイルを一つの巨大な Finder フォルダ に保存したりできる状態に達しているとは思えない。けれども、私から見て実 際に人々がコンピュータにして欲しいと思っていること、つまり整理整頓に多 大な時間を費やさなくてもよいように、という目標に向かって、私たちを大き く一歩進めてくれていることだけは確かなようだ。 おそらくまだこれからしばらく時間が掛かるだろうが、情報というものの未来 は、今よりもずっと無定形のものになると私は思う。情報のかたまりが個々バ ラバラに存在しているのではなく、すべての画像、手紙、レポート、プレゼン テーション、ムービー、その他のプロジェクトの構成要素が、ある意味でひと つのデータ媒体として融合したものの中に泡の一つ一つとして集まり、私たち はその中をいろいろの異なった方法でナビゲートして動き回ることができるの だ。日付によって、内容によって、ビジュアルなプレゼンテーションによっ て、キーワードによって、あるいはいろいろな属性によって。 つまり、私たちのデータに手を伸ばせるインターフェイスは、もはやファイル やフォルダといった使い古されたメタファーである必要はない。それに代わる ものは、私たちが理解する必要のない基盤構造と、自分が覚えている形で物事 を見つけたいという私たちの欲求との間に介在する、豊かでインタラクティブ なアプローチなのだ。早い話、内容をよく表わすようなファイル名を工夫する 必要とはおさらば、ということだ。 デスクトップの情報の未来を見通したこの方法を考え出したのは私ではない。 Apple でもない。それは、Yale 大学でコンピュータサイエンス教授をしてい る David Gelernter だった。彼はこの考え方を、少なくとも 1991 年にはも う語り始めていた。このアイデアを具現化するために彼が創設した会社はもう 消滅してしまったが、彼のアイデアの根本を知りたければ 2003 年の彼のイン タビューを読むとよくわかる。Information Beams のセクションだ。 このインタビューで、彼はこう語った。「私が何か新たに“現実世界の”情報 を(電子情報ではなく)得た時、新しい記憶が生まれる。例えば晴れた昼下が りに Red Parrot の前で Melissa と会って話をした、という記憶だ。私は、 こんな記憶に名前を付けたり、この記憶をディレクトリに保管したりはしな い。その記憶に含まれるどんなことでも、それを回収のためのキーとして使っ て、記憶を呼び戻すことができるはずだ。」 Spotlight はおそらく、メインストリームのオペレーションシステムやプログ ラムとしては初めて、私たちがいかに考え、私たちが何を保存しているか、そ の両者の間に正しい道筋を付けようとした Gelernter のヒューマニスト的な 観点に向けて、大きく一歩を踏み出したものと言えるだろう。 Dashboard のご紹介 ------------------ 文: Matt Neuburg 訳: 羽鳥公士郎 Tiger の新しい Dashboard 機能は、常に動いている擬似アプリケーションだ と思えばよい。常に動いているという意味は、それを終了させることができな いということだ。擬似アプリケーションという意味は、これは(実際にはある 面で Dock のようなもので)独立したプロセスではなく、(Dock と同じよう に)他のどのアプリケーションとも異なった仕方で動くということだ。 Dashboard は、常に2つの状態のどちらかにある。それが最前面のアプリケー ションでないときは、不可視で不活性だ。Dashboard を呼び出すためには、 ユーザが設定したキーボードショートカット(デフォルトでは F12)を押す か、Dock 内のアイコンをクリックする。そうして最前面のアプリケーション になったときには、画面全体を使い、すべてのウインドウやデスクトップ、メ ニューバーを暗い霧で覆いつくす。シャーロック・ホームズの物語に描かれる ロンドンのようだ。その霧の前で、ほぼ長方形をした明るい色の領域がいくつ か光り輝いている。これらはウィジェットと呼ばれ、Dashboard が主人役を務 めている。Dashboard が最前面にあるときにあなたができることは、1つの ウィジェットを操作することだけだ。1つに注目して、1つをドラッグし、1 つをクリックする。そのあいだ、他のアプリケーションは背面で動き続けてい る。Dashboard を使い終わったら、霧のどこかをクリックすれば、霧もすべて のウィジェットも消えてなくなる。そしてコンピュータを普通に使うことがで きるようになる。 ウィジェットそのものもある種の擬似アプリケーションだ。事実上は単なるウ インドウだが、通常のウインドウとは異なり、タイトルバーがないし、Aquaス タイルのインターフェースもメニューもない。実際、ウィジェットにはイン ターフェースの標準ルールが実質的に存在しない。事実上、開発者が心に描い たままのスタイルと形でスクリーンの上に描かれている。舞台裏をのぞいてみ れば、ウィジェットは1枚の Web ページとそっくりだ。Carbon や Cocoa で はなく、HTML と CSS、JavaScript によって実装されている。1つのウィ ジェットはバンドルファイルになっていて、デフォルトでは十数個のウィ ジェットが /ライブラリ/Widgets フォルダにインストールされている。実 は、Finder で(コンテキストメニューの パッケージの内容を表示 コマンド を使って)ウィジェットバンドルを開くことができ、その「コード」を読むこ とができる。サードパーティーのウィジェットは、すでにさまざまなウェブサ イトから手に入るようになっているが、このフォルダにインストールすること もできるし、ユーザの /ライブラリ/Widgets フォルダにインストールするこ ともできる。 インストールされたウィジェットはバイキング料理のようなもので、その中か ら好きなものを選ぶことができる。Dashboard を呼び出したときに何が現れる かはあなたしだいだ。スクリーンの左下にある大きな「+」をクリックする と、ウィジェットバーが現れ、そこに、インストールされているウィジェット のアイコンがすべて表示される。アイコンをクリックするかドラッグすると、 そのウィジェットが Dashboard のメイン画面に現れる。同様に、ウィジェッ トバーが表示されているときに、メイン画面にあるウィジェットについている 「x」をクリックすると、そのウィジェットが表示されなくなる(ウィジェッ トバーが表示されていないときにウィジェットの「x」を表示するには、 Option キーを押しながら、そのウィジェットの上にマウスポインタを持って くる)。特定のウィジェットを複数表示することも可能で、そうすれば役に立 つ。たとえば、世界時計ウィジェットは、ある時間帯に合わされた時計をひと つだけ表示するから、たとえば Los Angeles と Indianapolis の時間を表示 するには、世界時計ウィジェットを2つ表示し、1つを太平洋標準時刻に、も う1つを、えーと、Indianapolis が属している何とかという時間帯に合わせ ればよい。 Dashboard の基本概念、つまり、Dashboard が見えないときは何も操作ができ ず、最前面にあるときは他のことが何もできないというのは、特に Konfabulator と比較すると、制限が強すぎるように思われるかもしれない。 Konfabulator の場合は、ウィジェットを通常のアプリケーションウインドウ と同時に表示できる。しかし、Dashboard ウィジェットというものが、ちらっ と見たり、少しだけ作業をして、すぐに片付けるものだと考えれば、これにも 納得できるだろう。時計を常に見たいなら、システム環境設定の(日付と時 刻)時計を使えばよい。時計を作業の合間にときどき見たいなら、Dashboard の時計を使えばよい。そういう観点から言うと、Dashboard が最前面にないと きに、ウィジェットが、(ウインドウのように)スクリーン上の場所を占領し たり、(アプリケーションのように)Dock の枠を埋めたり、(ステータスメ ニューのように)メニューバーの空き領域を圧迫したり、CPU 時間を使ったり しないということは、ユーザにとってうれしいことだろう。その一方で、単一 のレイヤーという基本概念は、明らかに大きなモニタを使うユーザを優遇して いる。私の 12 インチ iBook は、ウィジェットを6つも表示すれば、ぎゅう ぎゅうになってしまう。 ウィジェットを HTML と JavaScript に基づくものにしたという点について は、議論の余地がある。ユーザの視点から言えば、統一されたインターフェー スがないということは、明らかに困惑のもとだ。Aqua ウインドウを一目見れ ば、どの部分や要素が何をするのかがすぐに分かる。しかし、ウィジェットは どれもが異なっている。実際に試してみない限り、(ボタンのような)クリッ クできるところがどこなのか分からないし、(タイトルバーのような)ドラッ グできるところがどこなのかも分からない。それに、どれもがおかしな格好を していて、それぞれが互いに似ていないし、私たちが Mac OS X で親しんでい るどんなものとも似ていない。プログラマの視点から言えば、人によって反応 は異なるだろう。もしあなたがすでに JavaScript の専門家なら、あなたは喜 んでいるかもしれない。しかし、Cocoa の洗練さと便利さに比べれば、HTMLと JavaScript によるプログラミング方法というのは、私には煩雑なように感じ られる。私自身の MemoryStick アプリケーションはよいウィジェットになる だろうが、Dashboard プログラマドキュメントを読んでいるうちに、膨大な書 き直しをしてウィジェットにしようという気が萎えてしまった。Tiger におけ る Dashboard というものが、本当に役に立ち生産的な部分になるかどうかを 判断するためには、もう少し待って、Tiger が成熟するにつれ、どのような ウィジェットが書かれ、それらをユーザがどのように使うのか、見きわめる必 要がある。 Automator を紹介します ----------------------  文:Matt Neuburg  訳:亀岡孝仁 Mac の歴史は、Apple による通常のユーザーが自分のコンピュータのもつプロ グラム能力を使えるようにしたいという試みで敷詰められている。Apple イベ ントはアプリケーション同士が何をするのかお互いに話が出来るようにした。 AppleScript はユーザーが Apple イベントを英語のようなプログラム言語で 操ることが出来るようにした。AppleScript Studio は一つの AppleScript ス クリプトが Cocoa インターフェースの中に包み込まれるのを可能にした。そ れでもゴールははるか遠いままであった。大多数のユーザーはプログラム言語 との係わりなど望まない。既製品のスクリプトもあるが、自分のやりたい事が 分からない場合、或いはそれをやってくれるものが見つからない場合はどうす る?問題は、自分がユーザーとして何をしたいのか事前に知るのは不可能なこ とである - それ故にプログラムの力を自らが所有することが大事になるので ある。 それでは、何をやらなければならないかと言うと、あなたが必要とする "積 木" を用意し、あなたがスクリプト言語を知らなくとも、_あなた_ がやりた いことを、 _あなた自身で_、_あなた_ がそれを組み立てられるようにするこ とである。Apple はこのチャレンジに応えるべく Automator を出してきた。 **Action です** -- Automator の "積木" は Action と呼ばれるファイルで ある。Tiger には 200を超える Action がプリインストールされている;これ らがやれることは例えば、iCal イベントを作る、PDF 内の画像を圧縮する、 或いはフォルダ内のファイル名を変えるといったことである。Automator をス タートさせると、インストールされている Action が全て表示される;簡単な ドラッグ&ドロップを使って自分の必要なものを上から下への Workflow と呼 ばれる配列を作る。その後その配列を動作させるには Workflow を走らせれば 良い;その Workflow を保存して後で都合に合わせて又走らせることも出来る し、それを友達に送ることも出来る、等々である。 Workflow に力を与えているのは何も Action を順番にこなしていくことだけ ではない:一つの Action は順番に並んだ前の Action からの入力を受け入 れ、そして出力を生成して配列の次の Action に _その_ 入力として伝えてい くことも出来る。更に、Action はインターフェースを持ってそこの付随した 設定を指定することも出来る。例えば、iTunes のボリューム(音量)を決め る Action の中ではその Action のインターフェースにあるスライダから来る 値が新しいボリューム値となる。そのスライダを、Automator の中で配列を 作っていく途中で事前に決めておくことも出来る;代わりに、その決定を遅ら せその Workflow が走った時に別のウィンドウとしてスライダが出てくるよう にも出来る。場合によっては、Action の全ての目的は、実際に走った時に ユーザーからの入力をリクエストするというのだってありうる。 Workflow はこの様にして Action から Action へのデータの流れとユーザー の入力、それも事前に与えられる場合と Workflow が走るにつれての場合との 両方について、賢い相互作用を提供している。参考のための例題を挙げよう。 まず 100枚の画像があり、それを Image001, Image002, の様な具合に名前の 変更をしたいとしよう。(これは本当に役に立つ;私はこの様な事をするには どうすればいいかしょっちゅう聞かれる。) これをやらせる Automator の配 列は以下の様になる: * ステップ 1: ユーザーに新しいフォルダをどこに作成するか聞く。(狙い は、万が一不具合が起こった場合に備えてファイル全てをこのフォルダにコ ピーしてからそちらのファイル名を変更しようというもの。) * ステップ 2: ユーザーに目的の画像ファイルが現在置かれているソースフォ ルダがどれか聞く * ステップ 3: そのフォルダにある全てのファイルのリストを作成する。(こ のステップは前のステップからフォルダを入力として受け入れそしてそのフォ ルダ内の全てのファイルを出力として生成する。) * ステップ 4: ユーザーにこれらのファイルをどこにコピーするかを聞く - ユーザーはステップ 1 で作成したフォルダを指定すべきである - そしてコ ピーをする。(このステップは前のステップからファイルのリストを入力とし て受け入れそしてコピーされたファイルを出力として生成する。) * ステップ 5: コピーされたファイル名を変更する。(これらは前のステップ からの出力である。) この Rename Files Action にはファイル名変更をどの 様にするかの数多くのオプションがある;その一つに定型プレフィックス ("Image" の様なユーザーが定義したもの) とそれに続く固定桁数の連続サ フィックス (ユーザーが 3 を指定すれば "001" が得られる) からなるものが ある。 使い易さというのはつかみ所のない概念であるが、この配列は実際の所作るの はいたって簡単であった。私はこれを Automator にあまり先のことは考えず 自然に組み上げた - 始めた時は、自分が何をしたいのか、或いは Automator が何をさせてくれるのかもはっきりしていなかった。私が Rename のステップ に入った時、Automator は自ら私に対してその前に自衛策として Copy ステッ プを入れるよう進言してきた;この様な警告や一つの Action の出力は次に対 する入力として適切かどうかのチェックを通して、Automator は全くの初心者 にも手助けをしてくれる。 Action はスクリプト機能をパッケージする方法としては素晴らしい。一つの AppleScript スクリプトを Action に転換するには二分ほどかかる。 AppleScript プログラマーとして言えば、スクリプトを裸のままあなたに送る よりも一つの Action として送る方がいいと思う。そうすれば、それをあなた は自分の配列の中に組み込んで、自分では AppleScript の事を何も知らない でも (そしてそれを変更するのに私に頼ること無しに) そのインターフェース を通してカスタマイズすることも出来る。そして、Action を Objective-C で 書くことも可能である。もっと言えば、アプリケーションのバンドルに Action を含ませることも出来るので、そうすれば更なるインストールをする こと無しにそれらを Automator が使えるようになる;例えば、単に BBEdit 8.2 (BBEdit 8 の顧客には無料のアップデート) を走らせれば、Automator に 20個余りのテキストプロセス用の BBEdit Action が魔法のように現れる。 これだけのことが揃えば、近いうちに更なる Action が続々と世に出されてく るのではないかと期待する - 大手のデベロッパーはそのアプリケーションに バンドルしてくるだろうし、スクリプトを書く人は既存のスクリプトを再パッ ケージするのに使ってくるであろう。この様に動き出せば、私が思うに、エン ドユーザーはすぐに Automator こそが長年の夢をかなえるものであることに 気付くであろう:ついに、誰でも Mac をプログラム出来る! Take Control ニュース/02-May-05 ------------------------------- 文: Adam C. Engst 訳: Mark Nagata **Tiger 電子ブック 5,000 部販売を達成** -- Tiger がリリースされてから 3 日も経っていないというのに、同時にリリースした私たちの四冊の Take Control 電子ブック Tiger 版は、この月曜日の日中にもう 5,000 冊の販売を 達成した。購入して下さった皆さん、皆さんの応援に感謝いたします! ま た、四冊とも Tiger と同時リリースをするためにあんなにも頑張って仕事を 仕上げて下さった四人の著者の方々にも、特別の感謝を捧げたい。さあ、次の 目標は 10,000 部だ! **あなたの内なる支配欲を Take Control** -- いや、これは決して私たちの 刊行予定タイトルではない。そうではなくて、鋭く世相を捕える Joy of Tech 漫画がまたクリーンヒットを飛ばしてくれたのだ。下記リンクの漫画をどうぞ ご覧あれ。自分のことを書いた本にお世辞が足りないのを Steve Jobs が気に 入らなかったという理由で、Apple が報復措置として Wiley 社の本を Apple Store から撤去した最近の騒ぎを元に、Apple と Jobs を痛烈に皮肉ってい る。 TidBITS Talk/02-May-05 のホットな話題 ------------------------------------- 文: TidBITS Staff 訳: Mark Nagata 各話題の下の2つ目のリンクは私たちの Web Crossing サーバでの討論に繋が る。こちらの方が高速のはずだ。 **Steve Jobs の伝記は認められない** -- 刊行予定だった Steve Jobs の伝 記が気に入らず、Apple 社はその出版社への報復として Apple の小売店から すべての Wiley 社刊の書籍を撤去するという手段に出た。この Apple の行動 は Wiley 社にダメージを与えただろうか? Wiley の本を書いている他の著者 たちには? また Apple 自身には? あるいは、すべての側がダメージを受け たのだろうか? (メッセージ数 9) **iMac G5 から煙が!** -- iMac G5 が焼けてしまったという Matt Neuburg の記事は同様の経験をした人たちからの体験談を呼び集め、どの程度の数の故 障ならば統計的に許容範囲かという議論も巻き起こす。(メッセージ数 15) **Mini の電源** -- 持ち運び用の Mac として Mac mini を使おうと考えてい る一人の読者が、予備の電源装置を購入したいと考えている。けれども Apple からは部品として別売されていない。これを別途購入する道はたしかにあるの だが、とても高くつく。(メッセージ数 7) $$ 非営利、非商用の出版物は、フルクレジットを明記すれば記事を転載できま す。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はあ りません。告示:書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登 録商標または権利です。 お知らせ:TidBITS(英語版)に関する情報(各種 ML 購読、バックナン バー、全文検索など)は、TidBITS ホームページにお越しくださいこの他にも多くの情報があります。TidBITS ISSN 1090-7017 原著者への感想や寄稿は 宛て英語でメー ルをご送付ください。 TidBITS(日本語版)に関する情報( ML 購読、バックナンバーなど)は、日 本語版ページ をご利用くだ さい。日本語版と日本語翻訳に関するお問い合わせ、コメント、激励は、この メールにご返信 ください。 -------------------------------------------------------------------