TidBITS#767/21-Feb-05 ===================== セキュリティ上の問題となる「同形異字」なりすましについて書いた先週の 記事に引き続き、Glenn Fleishman がフォローアップの記事を披露する。そ れから Matt Neuburg の記事が二つ、QuicKeys X3 の紹介と、Zengobi の変 わったプログラム Curio のレビューだ。Adam からは、あなたの電子メール アドレスが TidBITS の受け取りを拒否したり返送してしまったりした場合に 何が起こるかの説明と、返送が度重なったせいで購読が中止になってしまっ た場合にあなたがとるべき対策の解説がある。ニュースの部では、私たちの サーバの引っ越しがほぼ完了したこと、それに LaunchBar 4 のリリースに ついてお知らせする。 記事: MailBITS/21-Feb-05 TidBITS の電子メールが戻ってくると 同形異字 についての反応 QuicKeys X3 岐路に立つ 散らかり放題を Curio で片付ける Take Control ニュース/21-Feb-05 TidBITS Talk/21-Feb-05 のホットな話題 (日本語) Copyright 2005 TidBITS: Reuse governed by Creative Commons license Contact: --------------------------------------------------------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: * 読者のみなさん! あなたのカンパで TidBITS を応援してみませんか? <-- NEW! 今週は Tom Farrell 氏、David Laffitte 氏、そして Bob Dalsemer 氏の暖かい支援に感謝! * SMALL DOG ELECTRONICS: Mac OS X & iLife '05 - $189 <--------------- NEW! Apple Bluetooth keyboard, mouse, & adapter - $155! Free Gift with iMac G5 Purchase; 20" Cinema Display - $795 Visit: 800-511-MACS * GET FETCH FOR FREE! Fetch Softworks makes Fetch, the original <---- NEW! Macintosh FTP client, free for educational and charitable use. Apply today at ! * Dr. Bott, LLC: There's still time to get your favorite student <--- NEW! some new back to school gear for her PowerBook: whether it's the agile SportFolio or the svelte CEO Milano, Marware makes the ideal case for your 'Books. * Web Crossing: Did you know Web Crossing supports Podcasts?!? We can only guess what you'll podcast, but we're sure it'll be cool. Podcast tutorials, reports, or entertainment, using RSS, from blogs or discussions. * iPod Armor takes the abuse, so your iPod doesn't have to! <-------- NEW! Rugged aluminum construction keeps iPod safe from scratches and other random daily hazards. Your iPod is always safe in iPod Armor. * Circus Ponies NoteBook: Never lose anything again. NoteBook <------ NEW! keeps your digital life organized. Take notes, clip content, share information. Find anything instantly with automatic index pages. Free 30-day demo! * Awarded 4 mice by Macworld, Nisus Writer Express 2.1 <------------- NEW! is the writer's word processor that is both powerful and easy to use. Use coupon code "TidBits" and receive a $10.00 discount! * Bare Bones Software BBEdit 8.0 -- More than 100 new features and improvements including Text Factories, Codeless Language Modules, a Documents Drawer, and much more! To download a demo or to purchase a copy, visit . --------------------------------------------------------------- MailBITS/21-Feb-05 ------------------ **サーバの引っ越しはほぼ完了** -- 先週の私たちは、サーバの引っ越しに関し て一勝一敗という成績だった。私は、digital.forest の Chuck Goolsbee に 特に頼んで私たちのメインの Xserve の引っ越し作業を日中の時間にしてもら い、私自身がシャットダウン・スタートアップの操作に立ち会って見守ること ができるようにしておいた。(当初彼はダウン中の悪影響を最小限に抑えよう と、私のタイムゾーンで 2:30 AM という時刻に引っ越しを予定していた。) この決断のお陰で私はゆっくり眠ることができたし、私が手を加えなければな らないような問題も何も起こらなかったし、Chuck も交通渋滞その他の問題に 出くわすことなく、そのためダウンしていた時間もほんの一時間ほどで済んだ。 その一方で、私たちのデータベースや検索サーバを新しい棲み家に移すのを担 当した Geoff Duncan の作業は、いろいろな悪霊に取り付かれてしまった。彼 のメインのウェブサーバは電源回路が死んでしまい(Mac の電源を入れようと しても「カチッ」と音がするだけ、というのは絶対に耳にしたくない経験だ) 彼のデュアル Ethernet 装備の Power Mac は原因不明の理由で内部・外部ネッ トワーク間のブリッジを止めてしまい、その上彼自身自宅の引っ越しのために 現実世界の所有物を運ばねばならない日が翌日に迫っていたので即座に問題に 対処する余裕がなかった。家の引っ越しの後で Geoff は Power Mac G3 (Blue & White) を新しいメインのウェブサーバとして据え付け、Linksys ルータを 使って二つのネットワークをブリッジするようにした。ただ、こうしてハード ウェアもソフトウェアもいろいろに変わったので、彼はまだいろいろと細かい 問題点の修正に追われているところだ。だから、皆さんは db.tidbits.com で 検索エラーや変なページ、ところどころのリンク切れなどの問題に出会うこと があるかもしれないが、すべてが正常に戻るのももう間もなくのはずだ。[ACE] (日本語) "2005 年 2 月 18 日は TidBITS サーバの引っ越し" **LaunchBar 4 が発進** -- Objective Development が LaunchBar 4 をリリー スした。これはファイルやブックマーク、その他のものを適合生成のキーボー ドショートカットを使って開く、高く評価されているユーティリティだが、こ れにメジャーな改良を加えたバージョンだ。(TidBITS-671_ の記事“TidBITS 御用達ツール:LaunchBar”を参照。)今回の新バージョンでは索引スキャナ をいくつか追加(例えば iTunes や iPhoto のライブラリ、Sherlock チャン ネルなども検索できるようになった)し、Google や Wikipedia などのウェブ サイトを LaunchBar から直接検索できる検索テンプレートも加わり、データ ベースの記録(例えば iTunes のプレイリストや Address Book など)も LaunchBar インターフェイスを離れることなく一覧できるようになり、またマ ルチスレッドの索引付けエンジンも新たに装備された。LaunchBar 4.0.1 の価 格は1シートの Business License で $40、Home User License で $20 とな る。$30 の Family License は一つの家庭内で五台までのコンピュータをカバー する。また、LaunchBar 3 からのアップデート価格は $20 (business) と $10 (home) だ。LaunchBar 4 は 500K のダウンロードで、1セッションあたり七 回まで使える無料試用ライセンスが付属している。[JLC] (日本語) "TidBITS 御用達ツール:LaunchBar" TidBITS の電子メールが戻ってくると ---------------------------------- 文: Adam C. Engst 訳: 羽鳥公士郎 私たちがすべてのメーリングリストを Web Crossing ベースの新しいサーバに 移したことの、もっとも大きな利点は、購読しているみなさんが、ご自身の購 読を1つのユーザアカウントで集中管理できるようになったということだ。そ れによって、もしあなたが電子メールアドレスを変更したいと思ったら、一度 変更するだけで、私たちの手助けを必要とせずに、TidBITS や Take Control のすべてのメーリングリストについて自動的に新しいアドレスが使われるよう になる。もしアドレスを変更したいと思ったら、Account Help ページにその 方法が書かれているので、参照してほしい。(訳注: 日本語版の TidBITS は まだサーバの移行を済ませていません。) しかしながら、とてもたくさんの人々が、メーリングリストの購読を更新する 手間を省いて、電子メールアドレスの使用をやめてしまう。おそらく、購読者 が古いアカウントを完全に消去してしまったか、あるいは単に使うのをやめ て、受信メールがディスクの割り当てを超えてしまったかで、新しいメッセー ジが拒否されるようになる。あるいは、プロバイダが定期的に掃除をして、使 われていないアドレスを消去しているのかもしれない。詳細はどうあれ、私た ちの側に何が起こるかというと、私たちがそのアドレスに対して、TidBITS の 最新号や、TidBITS Talk のメッセージ、あるいは Take Control 電子ブック 無料アップデートのお知らせなどを送ろうとすると、そのメッセージが配達不 能として返ってくるのだ。 今までは、TidBITS 本誌が返ってくると、それは専用のアカウントに戻り、週 に一度、Geoff Duncan がメールボックスごとダウンロードして、彼が作った HyperCard ベースのユーティリティ Hired Thug を使って処理し、宛先不明の アドレスを突き止め、それをリストから消していた。Hired Thug はなかなか よくできていたが、TidBITS のメーリングリストの豊かな多様性と、Web Crossing 以前のサーバの設定とを考えると、Hired Thug を TidBITS Talk や Take Control メーリングリスト、各種翻訳版にも使うというのは現実的では なかった。これらのリストで戻ってくるメールは、ほとんど私が手で処理して おり、これはぜひ信じていただきたいのだが、宛先不明の処理というのは決し て楽しい時間の過ごし方ではない。 (日本語) "正統のメーリングリストにあらず" Web Crossing のメーリングリスト運営方法は少し異なっていて、宛先不明の 処理をよりよく自動的にこなすことができる。それには、可変エンベロープリ ターンパス(VERP)という技術を使う。VERP を使うと、すべてのメッセージ は封筒にそれぞれ異なる差し出し人アドレスが書かれた状態で送られるが、そ の差し出し人アドレスは、本質的には SMTP プロトコルレベルでの差し出し人 アドレスとなる。(実際の手紙と同じように、電子メールは仮想的な封筒に入 れられて送信されるが、その封筒を見るのは SMTP サーバだけで、封筒に書か れているアドレスは、あなたが目にするメッセージの To 行と From 行に書か れているものとは必ずしも一致しない。)Web Crossing が送る封筒には、た とえば のような差し出し人アドレスが 書かれていて、これによって、受け取り人と中に入っているメッセージの両方 を一意に特定できる。もしあなたのメールサーバが、私たちからのメッセージ を拒絶したり送り返したりしたら、Web Crossing が封筒に書かれた差し出し 人アドレスを見て、そこからユーザを割り出し、あなたのメールアドレスから 何度メールが返ってきたのかを記録しているカウンターの数字を1つ増やす。 もしもあなたのアドレスから、3日以上にわたって3回以上メールが戻ってき たら、あなたの TidBITS アカウントは「宛先不明」に分類されて、私たちは 電子メールの送信を止める。ということはつまり、あなたが週に一度の TidBITS のお知らせだけを購読しているなら、あなたのアカウントが宛先不明 になるには通常(特別号やときどきのお休みがなければ)3週間かかる。もし あなたが TidBITS Talk を購読していて、毎日受け取っていれば、3日で宛先 不明になることもある。 これは少しややこしいのだが、あなたの TidBITS アカウントが宛先不明に なって、私たちのリストから一切メールを受け取らなくなったとしても、あな たはリストを _購読_ し続けている。これによって、私たちは宛先不明のアド レスにわざわざ届けるということをしなくてすむが、あなたの方では、ウェブ 経由であなたのアカウントにログインして、私たちのシステムにあなたのアド レスが復活したことを知らせるか、あるいは電子メールアドレスを現在使って いるものに変更することができる。だから、もしあなたが TidBITS がこなく なったと思っていたり、ここ何日か TidBITS Talk を受け取っていないという なら、まず始めにするべきことは(あなたのスパムフィルターを確認するのは もちろん!)、ログインしてあなたのアカウントが宛先不明になっていないか 確認することだ。最初にも書いたけれど、ログインして電子メールアドレスを 変更する方法については、Account Help ページを見てほしい。Account Help ページにある適切なリンクをたどってログインすれば、Web Crossing が自動 的にあなたのアドレスを確認するよう求めてくる。 宛先不明というのは、メーリングリストにとっては由々しき問題だ。私たち は、毎週1から2パーセントのアドレスから返ってくるメールを受け取る。こ れは、私たちのリストの大きさでは、数百のアドレスということになる。これ までは、宛先不明のアドレスを特定するのに全力を尽くし、それをリストから 取り除いていたけれど、一度そうしてしまえば、一時的な問題でメールを受け 取れなかった人が購読を再開しようと思うと、再度新規購読をするか、私たち に助けを求めるかしか方法がなかった。今では、あなたはご自身の TidBITS アカウントをすべてウェブから管理できるようになったので、一時的な配送の 問題が起こっても、ご自身で元に戻すことができる。それによって私たちの時 間も解放され、私たちは TidBITS 最新号の内容を充実させることに集中でき るのである。 同形異字 についての反応 ----------------------- 文 Glenn Fleishman 訳 笠原正純 前号の TidBITS で、私はローマ字に良く似たあるいは全く同じ形をした非英 語文字について書いた。詐欺師は、この文字を使って、鍛えられた目を持って しても同一に見えるドメイン名を登録し、安全であるかのように見えるよう SSL(セキュア・ソケット・レイヤー)デジタル証明書を取得することが可能 なのだ。(TidBITS-766_の"自分の目も URL も信用できない"を参照) (日本語) "自分の目も URL も信用できない " この一週間に、見せ掛けに対するいくつかの報告に値する動きがあった。 まず、Mozilla Foundation は Firefox 1.0 での標準設定で国際化ドメイン名 (IDN)のサポートを不使用にすることにした。彼らは、1.1 ではもっとエレ ガントな方法を開発したいと願っている。彼らは(そして他の人々も)、良く 知られたサイトと同形異字(紛らわしく書かれた)ドメイン名を許しているレ ジストラを非難している。 Netcraft の記事で Mozilla や Firefox などオープンソースの "gecko" を 使ったブラウザで IDN のサポートを不使用にする方法を説明している。ロ ケーションフィールドに "about:config" とタイプしReturnキーを押す。スク ロールして "network.enableIDN" の設定を探す。この設定が true になって いたら、Wクリックして false にする。ウィンドウを閉じる。というものだ。 あなたがこの設定をオンにしておきたいのなら、Firefox 用 SpoofStick をイ ンストールすることをお勧めする。これはブラウザ機能拡張で同形異字や他の ウェブ上の成りすましの兆候があれば警告してくれる。 面白いことに、Firefox と Mozilla は同じプログラムを共有しているにもか かわらず、SpoofStick を Mozilla にインストールしようとしたら Mozilla がクラッシュしたと一人のユーザーが書いていた。私が考える限りだが、 Mozilla のプラグインインフラは Firefox の機能拡張をサポートしていない のだろう。Mozilla ユーザーは TrustBar を注意深く見守ったほうがいいだろ う。これは、同じやり方ではないが、成りすましドメインを特定することを助 けてくれるだろう。 他の読者は、彼女のユーザーグループが Safari 用 Saft を使うようにアドバ イスをしていたと書いていた。それは、Safari の組み込み機能を拡張し、同 形異字の警告を付け加えるものだ。 最後に、何人かの読者が指摘しているには、彼らは彼らの様々なブラウザやシ ステムでは成りすましが動作しないということだ。その理由は?ここで問題に なっているように punycode 経由での IDN サポートより前に作られたシステ ムとブラウザ (Mac OS 9 下の iCab のように)を使っているということだ。 このケースでは、古きことは良きことといえるだろう。 QuicKeys X3 岐路に立つ ---------------------- 文: Matt Neuburg 訳: Mark Nagata CE Software 社は、数年間続いた財政的損失と、疑問の残る会社買収を経て、 その QuickMail 製品を(Outspring Inc. に)売却し、それから 2004 年の 4 月になって Startly Technologies, LLC という名前で非公開企業となった。 現在残っている製品で最も重要なものは、あの古参のマクロユーティリティ、 QuicKeys X で、Mac OS X 用のバージョン 3.0 ("X3" と呼ばれる) は、会社 の再編以来最初に登場するメジャーな改訂版だ。 (日本語) "QuicKeys X: 幽霊の再来" まずはっきりと言えるのは、QuicKeys X3 が玉石混交だということだ。一方で は、そのインターフェイスが大きく改善された。実際のところ、QuicKeys の 15 年間にわたる全歴史の中で、今回のバージョンが最高のインターフェイス であることに疑いの余地はない。1996 年に遡るが私が "Classic" 版の QuicKeys 3.5 をレビューした時、モーダルなダイアログがダイアログの上に 次々と重なっており、それらを一つ一つ段階を追って設定して行かなければな らないというおそろしく不細工な作りを、私は手厳しく批判したものだった。 だが、その時代はもはや過ぎた。今では、モーダルでない通常の編集ウィンド ウが使われ、便利なインスペクター・パレットも控えており、ツールチップも あり、順序をなしたステップはその場で展開表示にすれば詳細が一覧できてド ラッグによる並べ替えも可能、つまり QuicKeys は今や最高度の Cocoa ウィ ジェットとその運用の素晴らしいお手本と言える。カラーやそのシェード付け も見た目に美しく、クリック可能なアイテムはその上をマウスが通り過ぎただ けでハイライト表示になる。目にも美しく、使っても楽しい。特に印象的なの はデモを使って一連の作業を記録するところだ。ボタンやメニューの上にマウ スを持ってくると、QuicKeys はその部分以外の画面を暗くし、あなたがどの インターフェイス部分をクリックしようとしていると認識したのかを、そのハ イライト効果によってはっきり示してくれる。 (日本語) "形態、機能と Quickeys 3.5(第二部)" けれども他方では、QuicKeys は Apple の Accessibility API をフルに活用 できないでいる。QuicKeys がさまざまのインターフェイスウィジェットを見 たりクリックしたりできるのはまさにこの Accessibility API を通してして いるというのに。そのため、皮肉なことに、AppleScript や GUI スクリプティ ングを使えば簡単に検知してコントロールできるようなウィジェットに対して 盲目、という状態になってしまっている。例えば、システム環境設定の 共有 パネルにあるサービスのリストについては、AppleScript ならば(PreFab の UI Browser を使ってすぐにわかったことだが)このリストが8つの行と2つ のカラムを持った表を成していることを認識でき、最初の行が何を言っている か(「パーソナルファイル共有」)そしてその行のチェックボックスがチェッ クされているかどうかも報告することができる。また、AppleScript はその チェックボックスがチェックされていない場合チェックを入れることもできる。 けれども QuicKeys は、そのパネルの上には 開始 ボタン以外何も見ることが できない。 (日本語) "Mac OS X でスクリプト化不能だったことを可能にする" また、今回のバージョンの QuicKeys では、何年も前の "Classic" バージョ ンの QuicKeys に存在していたものと同じ機能を再導入している。それが、決 定判断だ。これは非常に重大な機能だ。なぜなら、異なった状況に応じてマク ロに異なったことをさせたいというのはよくあることだからだ。例えばファイ ル共有をオンにしたいという場合、「パーソナルファイル共有」チェックボッ クスがチェックされていなければ、それをクリックすればよい。でも、それが 既にチェックされているならば、クリックしてはいけない。(それではオフに なってしまうからだ。)ところが残念なことに、QuicKeys にとっての決定判 断とは、そこでマクロを中止するか、それとも手順中の別のステップへ飛ぶか、 というものでしかない。つまり、プログラミングで言う "goto" を使うという ことで、これはあらゆるプログラミング構成の中で最も不細工なものと言って も過言ではないだろう。また、QuicKeys X3 では変数の導入もなされているが、 マニュアルにはこんなことが書いてある。「変数というのは、このプログラム のかなり高度な機能の一つだ」そうだ。おやおや、これは何かちょっと変だと 思わなければ。そもそも変数というのはプログラミングにおいて最もシンプル な事柄のはずで、他のすべての事柄の基礎となるものだ。(ここで言われてい るような)どこか神秘的で使い方の難しいものなどではない。ここで明らかに 何が欠けているのかと言えば、CE と Startly が、おそらく QuicKeys をシン プルでダイアログベースのものに留めておきたいという願いからのものなのだ ろう、ここに本物のプログラミング言語を賦与しないという決断を下してしまっ たということだ。けれどもユーザーが何か本当に使い勝手のあることを成し遂 げようとすれば、そこで本当に必要とされるのは、本物のプログラミング言語 だ。(これこそがまさに、私が 1996 年に憤激のあまり QuicKeys を放棄して、 WestCode Software の OneClick に乗り換えた理由だった。けれども何たるこ とか、OneClick は終に Mac OS X へと飛び込むことはなかった。) (日本語) "Mac とマクロをめぐって" そういうわけで、結果として QuicKeys X3 は何とも中途半端な位置を占める ことになってしまった。$100 という価格は、競合するマクロユーティリティ である Script Software の iKey ($30) や Stairways Software の Keyboard Maestro ($20) に比べてかなり高い。それでいて、Accessibility API のパワー は備えておらず、AppleScript ならば無料で使えるプログラミング可能性も欠 けている。QuicKeys X3 の素晴らしいインターフェイスだけでこの飛び抜けた 価格に値するかどうか、それはユーザー各人が自分で判断すべきことだろう。 散らかり放題を Curio で片付ける ------------------------------- 文: Matt Neuburg 訳: Mark Nagata きちんと片付いた世界などというものはあり得ない。だからこそ、私はいつも コンピュータの上で情報を保存したり取り出したりするための新しくて興味深 い方法を発見し続けているのだ。そういう新しい方法というものは、たいてい 階層的な構成の中に順序付けをしたり、高度な検索機能を使って情報を取り出 したり、という内容を含んでいる。とにかく、私はアウトラインやデータベー ス、キーワードや索引付けといったものに魅せられているわけだ。けれども、 このようなアプローチは誰にでもどんな場合でも当てはまるわけではない。つ まるところ、人間の頭の中も決してきちんと片付いた場所ではないのだから。 どんな階層構造も付加できなかったり、どんなキーワードもふさわしくなかっ たり、検索すべきどんな言葉もはっきりしていなかったりするかもしれない。 作業の進行に従って、そういうものを適宜その場で工夫しなければならないと いうこともあるだろう。現在何が揃っていて、どういう風にそれを組み合わせ て行けばよいのか、本当にぼんやりとした感覚だけが頭の中にあるという状態 であって、その感覚を頼りに進めて行くだけで充分なのかもしれない。ひょっ としたら、あなたの手持ちは頭の中のぼんやりと雲のように濁ったスープ状態 (アイデアと目標)と、あなたのコンピュータの中の雑然とした材料(書類や URL など)だけかもしれないのだ。 Zengobi 社の Curio は、そのようなスープの中をあなたが泳ぎ回る手助けを しようとする。それはアウトラインやデータベース、キーワードといったよう な左脳的道具に頼るのではなく、もっと右脳的なもの、つまり絵を描くことに よってするのだ。このプログラムは、自分自身のことを「アイデア開発環境」 と称しているが、実はそれ以外にもありとあらゆる目的に使える。以下では簡 単にそのインターフェイスを紹介し、それから Curio が特に得意とする分野 を評価してみたい。 **あなたの資産をカバーする** -- 一つの Curio 書類は一つまたはそれ以上の ページから成り、このページは「アイデア空間 (idea space)」と呼ばれる。 個々のアイデア空間は単純なドロープログラムの書類のようなものだ。これは ホワイトボードのようなものだと思えばよい。いやむしろ、我々がみんな子供 の頃にぺたぺた貼付けて遊んだ Colorform の台紙のようのものだと思うのが ぴったりするかもしれない。この台紙にあなたが貼付けていくべきオブジェク トが「図 (figure)」だ。一つの図は、直線(矢印が付いていてもよい)かも しれないし、何か幾何的な図形でも、あるいは一塊のテキストでもよい。実際 のところこの後者二つは同じものとして扱われる。なぜなら、テキストは何ら かの幾何的な図形の内側に書かれるからだ。これらの個々の図はリサイズした り回転させたりすることもできるし、いくつかの図を整列させたりグループ付 けしたりすることもできる。図にチェックボックスを付けたり「旗 (flag)」 (例えばクエスチョンマークのような小さなアイコン)でマーク付けしたり、 あるいは「ランク付け (rating)」(0 個から 5 個までの星)を割り当てたり することもできる。また、何の上にでも文章をなぐり書きすることができる。 個々の図は、また「資産 (asset)」の代表となることもできる。ここからが面 白くなるところだ。資産とは、あなたのハードディスクにある書類のことだ。 Curio の中で一つの図をダブルクリックすると、その書類がそのオーナーであ るアプリケーションによって開かれる。また、資産は URL であってもよい。 それを Curio でダブルクリックすれば、その URL をあなたのウェブブラウザ が開く。その資産がプレビューできるものである場合、例えば画像ファイルの ような場合は、プレビューが Curio の中にも現われる。それ以外の場合には、 その書類アイコンとタイトルが見えるだけだ。実際、あなたのブラウザから画 像を Curio 書類の中へドラッグすれば、その画像がプレビューとして表示さ れ、それをダブルクリックすればその元のウェブページが開くようになる。 こうして、Curio 書類には単なるドロー書類以上のものが含まれることになる。 つまり、これはたくさんのドローオブジェクトを集めたもので、それらのオブ ジェクトは外の世界にあるものを代表するものでもあるのだ。実際は、外の世 界だけでなく内の世界を代表することもできる。つまり、Curio 書類はパッケー ジであって、その中で一つの資産をコピーしてそれ自身も同じパッケージの中 に位置するようにし、そのコピーの方もやはり同じに見え、元々それを作った プログラムで編集するようにもできるということだ。そればかりでなく、一つ の資産を何個でも数多くの図で代表させることができる。言葉を変えて言えば、 あなたのハードディスク上の一つの書類が、一つの Curio 書類の中でいくつ もの場所に同時に登場することができるのだ。 というわけで、Curio がどのようにして混沌の中に光明をもたらすことができ るのか、もうおわかりだろう。あなたのハードディスクの中に 50 個の書類が あったとしても、たった一つの Curio 書類の中で、それらの多数の書類をい くつものアイデア空間という形でさまざまの組み合わせに利用できるようにし、 それぞれにテキストや URL、なぐり書きの文章などを付けることもできる、と いうことだ。 **分析と統合** -- O'Reilly の 2004 年 Mac OS X Innovators コンテストで、 Curio は2位入賞という輝かしい成績を得た。それでも、あえて批判的な見方 をして Curio を細かく吟味すれば、そもそもこれは一体なぜこんな大騒ぎを しているのか、と言いたくもなるかもしれない。結局のところ、私がこれまで レビューしてきたような数々の情報断片キーパーやオーガナイザーたち(例え ば iData 2、Tinderbox、TAO などといったものたち)もディスク上のファイ ルへのリンクを保存できるし、いくつかのもの(NoteTaker と DEVONthink) に至ってはそれらのファイル自体を自分の書類の内部に保管できるオプション を持つものさえある。その上、Curio のこれ以外の面に注目すれば、どう贔屓 目に見てもそれは生焼けの実装という感じを拭いきれない。これならば Curio が他のプログラムと同程度にうまくできる、と言えるような機能は、実のとこ ろ一つもない。そう考えてみれば、いったい O'Reilly の人たちはちゃんとし たアウトライナーや思考マッププログラム、図式プログラムや資産マネージャ などを見たことがあるのだろうか、という気になってくるのも無理からぬこと だろう。 例えば、Curio におけるアイデア空間は階層的に配置できるし、一つのアイデ ア空間の中でも、いくつかの図を組み合わせて「リスト (list)」と呼ばれる 特別の図の内部に置き、階層的な配列として表示することができる。ところが Curio を本物のアウトライナーとして使うのは全く無理だ。TAO や NoteTaker に見られるような階層的整理やナビゲーションのパワーがどこにも見られない のだから。 Curio のドロー関係の能力は魅力的だが、本格的なドロー作業に使うことは考 えられない。いろいろな形や矢印を描くことはできるが、矢印の先端が自動的 に図形に張り付くことはないので、ConceptDraw や OmniGraffle の作るよう な本物のダイアグラムを作ることもできなければ、Pyramid のような、さらに は Inspiration すらも含め、専門の思考マッププログラムが提供する効率性 をもってアイデアを生み出し連結させることもできない。 Curio には検索機能がある。けれどもそれはあなたの作ったテキストブロック で、あるいはあなたが資産に付属させたノートの中で、単純な検索をするだけ だ。資産自体の内容を検索することはできない。何かがチェックされているか、 あるいは特定の旗が立っているかどうかを検索することもできない。それに、 検索結果の表示の考え方は、合致した箇所を集めて表示するというものではな くて、単に合致しなかった部分をすべて薄く表示するだけだ。どの図が合致し たかを確かめるには、すべてのアイデア空間をあなたが一つ一つスクロールし て、目で見てまわる必要がある。Tinderbox や DEVONthink のようなパワフル なキーワード機能や索引付け、あるいは NoteTaker や TAO の検索機能と比較 してみれば、その差は歴然だろう。 個々の図を「ジャンプターゲット」とすることができる。つまり、一つのアイ デア空間で矢印の画像をダブルクリックすると、その図が別のアイデア空間の 中で表示されるのだ。けれどもこれは異なった Curio 書類どうしの間では働 かないし、Tinderbox や NoteTaker でのハイパーリンク機能に比べれば大き な隔たりがある。 Curio は「探偵 (Sleuth)」という名のウェブ検索機能を提供する。けれども、 これは単に既存の検索エンジンやその他のサイトを利用するためのフロントエ ンドを予め設定してあるものにすぎない。一度に一つのエンジンしか検索でき ないし、例えば Sherlock のようなコンパクトなインターフェイスを提供する わけでもなく、また DEVONagent のように検索結果を集めてくれるわけでもな い。実際、これは全然本物の検索ツールではない。これは単なるウェブブラウ ザで、本物のウェブブラウザを使う場合に比べて何ら実際的な利点はない。そ の上、Finder やあなたのブラウザとの間を行き来せずに Curio の中で直接書 類やウェブページを出してみせるような「サービス」もない。これも NoteTaker や DEVONthink との大きな違いだろう。 * TAO: (日本語) "TAO は上げ相場" * Pyramid: (日本語) "Pyramid でセラピー" * iData: (日本語) "iData Pro、Cocoaに対応" * DEVONthink: (日本語) "DEVONthink は考える、あなたのために" * NoteTaker: (日本語) "NoteTaker でテイク・ノオト" * Tinderbox: (日本語) "Tinderbox でハートに火を点けて" * ConceptDraw: (日本語) "ConceptDraw コネクション" * Inspiration: (日本語) "Inspiration 7 に霊感を受ける" その一方で、Curio がどんな考え方をもってあなたのいろいろな資産を管理し 表示しようとしているのかということに、あなたがもしも注意を集中したなら ば、上に述べてきたようなただし書きのいくつかは消え失せてしまうことだろ う。つまるところ Curio はスーパー・ドローイング・ツールを目指している わけではない。なぜなら、もしもあなたが Curio 書類の中にスーパー・ドロー イングを含めたいならば、それは可能だからだ。あなたは、何かスーパー・ド ローイング・ツールを使って、それを編集すればよいだけのことだ。Curio は 素晴らしいワードプロセッサでも、素晴らしいアウトライナーでもある必要は ない。なぜなら、何か他のアプリケーションで作ったワードプロセッサ書類や アウトライン書類を Curio 書類の中に埋め込むことができるからだ。実際、 Curio 書類の中からどんな種類の新規書類を作ることもできる。予め Curio に空の書類を渡しておきさえすれば、いつでもそれを埋め込まれた資産として 複製し、それをどれかのアイデア空間の中で代表させればよい。それを編集さ せるのも、ワンタッチでできるのだから。 こうして見てくると、Curio の強みが何かを理解するためには、あなたが持っ ている資産そのものに注意を集中することが重要だということがわかる。つま り、あなたはさまざまの写真や URL、PDF、スプレッドシート、Word ファイル、 その他あらゆる種類の書類を作ったり集めたりしている。そういうさまざまの 資産を、あなたがホワイトボードの上で並べて披露するところを想像してみる とよい。そして、そのホワイトボードが縮まって一つの書類になったと考えて みよう。単純に整理のための目的でそれをあなた自身に提示して見せるのもよ い。または、Curio の本来の目的である「アイデア開発」のために使うのもよ いだろう。何らかの研究あるいは発案プロジェクトの一環として、これらの資 産を収集して提示するわけだ。それから、それらを他の人たちのために披露し て見せることもできる。Curio には驚くほど良質の HTML 書き出し機能(それ ぞれの資産は file プロトコルの URL を通じてアクセス可能となる)があり、 ホワイトボード上に表現されたあなたのアイデア空間たちを PDF あるいは画 像ファイルとして書き出すことができる。 **結論** -- いくつかの明快かつシンプルなドロー図式を使って、混沌のスープ を、つまりあなたのハードディスクの混沌とあなたの頭脳の中の混沌とを、切 り分け整理して行くご自分が想像できるのならば、そういうあなたには Curio こそがまさに暗闇の中の灯台の光のようにあなたを導き手招きしてくれるだろ う。このプログラムの価格は $130 で、その機能がどれもまだ未完成という状 態を考えればかなり高く思える(私は正直のところ $30 とか、その程度の価 格が順当なところだと思った)が、いずれにしても興味を持てたユーザーの方 は自分自身でご判断頂きたい。30 日間有効のデモ版が 5.6 MB のダウンロー ドで入手可能だから。Curio にはよく出来たオンラインヘルプが付いており、 チュートリアルも付属している。このチュートリアルは便利だが、その文章は 時々これが AltaVista の Babel Fish 自動翻訳を使ったのではないかと思え ることがある。(「書類で良い足の上に立つ」って何のことだ?)Mac OS X 10.2.8 かそれ以降が必要だ。 PayBITS: あなたのコンピュータの曇りを晴らすことができて、Matt に お礼したくなりませんか? ならば、少額のお金を彼に送ってみましょう! PayBITS の説明: Take Control ニュース/21-Feb-05 ------------------------------- 文: Adam C. Engst 訳: Mark Nagata もうリリース直前に来ているタイトルもいくつかあるが、今週はそれらを早く 完成させたいという気持ちを高ぶらせてくれる嬉しい励ましの声が、“Take Control of Mac OS X Backups”に対する好意的なレビュー記事という形で届 いた。 **MacGuild が "Take Control of Mac OS X Backups" に A ランクを** -- 「企 業国家アメリカのための究極の Apple ユーザーグループ」と自称する Macintosh Guild が Joe Kissell の電子ブック“Take Control of Mac OS X Backups”をレビューし、A (Outstanding) という成績を付けてくれた。[ACE] TidBITS Talk/21-Feb-05 のホットな話題 ------------------------------------- 文: TidBITS Staff 訳: Mark Nagata 各話題の下の2つ目のリンクは私たちの Web Crossing サーバでの討論に繋が る。こちらの方がずっと高速のはずだ。 **ヘッドフォン・ヘッドセットをどう使い分ける?** -- 音楽用ヘッドフォンや イヤーバッド、電話用のヘッドフォンもあるが、その中で、音楽を聴くのにも 電話で話すにも、どちらにも使えるものはあるだろうか? (メッセージ数 5) **Mac mini の使用感** -- Apple の Mac mini がそろそろ購入者たちの手元に 届き始めているが、実際の使い心地はどうだろうか? メモリの限界や、ワイ ヤレス周辺機器の使用などについて、読者たちが考察する。(メッセージ数 5) **私の e-life を新しいマシンに移す** -- 新しい PowerBook が届くのを待ち ながら、今のマシンから新しいマシンへとデータを転送する一番良い方法は何 だろうか、と一人の読者が考え込んでいた。(メッセージ数 13) $$ 非営利、非商用の出版物は、フルクレジットを明記すれば記事を転載できま す。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証は ありません。告示:書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者 の登録商標または権利です。 お知らせ:TidBITS(英語版)に関する情報(各種 ML 購読、バックナン バー、全文検索など)は、TidBITS ホームページにお越しくださいこの他にも多くの情報があります。TidBITS ISSN 1090-7017 原著者への感想や寄稿は 宛て英語で メールをご送付ください。 TidBITS(日本語版)に関する情報( ML 購読、バックナンバーなど)は、 日本語版ページ をご利用 ください。日本語版と日本語翻訳に関するお問い合わせ、コメント、激励 は、このメールにご返信 ください。 -------------------------------------------------------------------