TidBITS#763/24-Jan-05 ===================== Macworld Expo の大騒ぎの興奮も収まるにつれ、私たちも落ち着いて物事を 考える気分になっている。そこで、Glenn Fleishman は Apple と Macintosh の初期のころの逸話を集めた Andy Hertzfeld の本、Revolution in the Valley をレビューする。また、Matt Neuburg は Rogue Amoeba の Audio Hijack Pro がどうして見た目よりもずっと便利なのかを解説する。今週はあ まりめぼしいニュースが無いが、Pepsi が再び iTunes Music Store 協賛プレ ゼントのセールを予定しており、Entourage 2004 のジャンクメールフィルタ がアップデートされた。 記事: MailBITS/24-Jan-05 革新は絶え間なく続く Pro にする理由(Audio Hijack Pro のこと) TidBITS Talk/24-Jan-05 のホットな話題 (日本語) Copyright 2005 TidBITS: Reuse governed by Creative Commons license Contact: --------------------------------------------------------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: * 読者のみなさん! あなたのカンパで TidBITS を応援してみませんか? <-- NEW! 今週は Jay Hunter 氏、Victor Norton 氏、そして John & Nichola Collins 両氏の暖かい支援に感謝! * SMALL DOG ELECTRONICS: iWork, iLife, .Mac - $229 <----------------- NEW! 12-inch iBook w/ AirPort Network & Case - $999 Apple 20-inch Cinema Display (old style) - $799 Visit: 800-511-MACS * FETCH SOFTWORKS: The original FTP client for the Macintosh <------- NEW! is better than ever before. 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To buy or for a 30-day demo: --------------------------------------------------------------- MailBITS/24-Jan-05 ------------------ **Pepsi が iTunes Music Store に再挑戦** -- 1億本の炭酸飲料のボトル キャップの裏に iTunes Music Store で使える無料のダウンロードコードを入 れるという去年のキャンペーンは失敗だった。わずか500万が消費者によって 使われただけだったのだ。にもかかわらず、Apple と Pepsi は再び同じこと をやろうとしている。2005年1月31日から5月23日まで、Pepsi は2 億曲分の無 料音楽ダウンロードコードを色付砂糖水の特別なマークをしたビンに入れるこ とを計画している。実際の勝率は、対象となるビンがどれだけ売り出されるか によるとPepsi は注意深く注釈をしているが、獲得確率は3分の1と予想され ている 。面白いのは、Apple がこのキャンペーンのスポンサーではないと公 式ルールで明言されていることだ。 iTunes Music Store のこぼれ話にちなんで、Apple は iTunes Music Store が2億5,000万曲を売り上げ、今でも毎日100万曲の売上があるとアナウンスし ている。 [ACE](笠原) (日本語) "iTunes Music Storeからのダウンロード件数、2億5,000万曲 突破" **Microsoft が Entourage のスパムフィルターをアップデート** -- Microsoft は Junk E-mail Filter Update 1 for Microsoft Entourage 2004 を、Microsoft AutoUpdate utility 経由でリリースした。(もしあなたが自 動にしていない場合は、どのOffice 2004 アプリケーションからでも構わない ので、Help > Check for Updates で AutoUpdate を起動できる。)2.9 MB(日本語版は 3.7 MB)のアップデートは、どのようなメッセージがジャン クであるのかを見分けるための最新の定義を含んでいる。Microsoft によって 開発され継続的に調整されるスパム定義に依存しているので、アップデートに よってスパムフィルターを効果的保つことは重要だ。Entourage 2004 のジャ ンクメールフィルターについての詳細は Tom Negrino の "Take Control of What\'s New in Entourage 2004" 電子ブックを参照いただきたい。その本に は、Michael Tsai の素晴らしい SpamSieve ユーティリティの $5 値引クーポ ンがついている。実際にあなたが受け取ったメールを学習することでスパムを 篩い分けるというベイズ理論に基づくアプローチのほうを好むのならこちらの ほうが適しているだろう。 [ACE](笠原) (日本語) "Microsoft Entourage 2004 迷惑メール フィルタ更新プログラム 1 (11.1.0)" 革新は絶え間なく続く -------------------- 文: Glenn Fleishman 訳: Mark Nagata Andy Hertzfeld が語ってくれる物語がある。それも何十ものさまざまな物語 だ。もしもあなたがこれまでに 128K Macintosh を持っていたことがあるな ら、あるいは持ってみたいと憧れたことがあるなら、それともあの素晴しい箱 の中へと注がれた仕事に敬愛の気持ちを感じたことがあるなら、そういうあな たにぴったりの本が、Hertzfeld の新刊書“Revolution in the Valley”だ。 この本を読めば、Mac の誕生に携わった彼の個人的体験を巡って、魅惑的かつ スリル満点の旅を楽しむことができる。 この本の内容は、Hertzfeld のウェブサイト Folklore.org に書かれたことが 元になっている。彼がこのサイトを始めたのは 2003 年 7 月のことで、これ まで一度も語られなかった、あるいは少なくとも詳しくは公開されたことのな かった過去の逸話を伝えようというのが主な動機だった。このサイト自体は彼 が開発中のソフトウェアのデモンストレーションという性格もあった。何人か の人たちが語る文章を、書き加えや注釈なども取り入れながら集めてまとめる ためのソフトウェアだ。この Folklore.org サイトはそのまま運営を続けてい るので、この本の中に誤りを見つけたり、あるいは Hertzfeld の言うことに 論争を仕掛けたいという方は、サイトを訪れて、該当する逸話に対しコメント を投稿することができる。 Hertzfeld が Apple 社を去ったのは 1984 年、最初の Mac が出荷された後の ことだった。その後の彼はなかなか興味深いキャリアを積んできた。彼はまた 人に恨みを買うようなこともほとんどなかった。たいていの場合、彼の口をつ くのは誉め言葉であって人を葬るような文句は聞かれない。この本は、コン ピュータを作り出すことに関する最も核心となる点、ハードウェアやソフト ウェアがそもそも動き出せるためにひねり出さねばならなかった何十もの独創 的なトリック、などを巡って話を進める。それより以前、またその当時でさえ も、Apple はあまりにも多くの革新的技術を一つの箱に詰め込もうとし過ぎて 失敗する、という独特の習性に苦しめられていた。Apple III 然り、Lisa 然 り、そしてそのために、妥当な価格とパフォーマンスをもった製品を作り上げ ることが出来ないでいた。 (Lisa ファンの皆さんはどうかお怒りを鎮めて頂きたい。Steve Jobs は Lisa チームのメンバーたちとその革新技術とを取り込んでそれを Mac に詰め 込み、結局そのためにこの前代マシンは不遇の運命を辿ることになった。 Hertzfeld も回顧しているように、Lisa 設計者の Rich Page は始まった当初 の Mac/Lisa 合同チームのブリーフィングで、こう叫び声をあげたものだ。 「君たちは自分が何をやっているのか分かってない! ... この Macintosh っ てやつはきっと Lisa を潰しちまう! この、Macintosh ってやつは、きっと Apple をダメにするぞ!」と。それから、Apple III ファンの皆さんには... おっと、私は何を言っているんだ? Apple III ファンなんていうものは存在 しない。私自身は 1980 年ごろ Apple III にデータを入力していた時期が あったが、そのことであのマシンに深い洞察が開けたなんてことは何もなかっ たのだから。) Hertzfeld はこの本で直接的に物語を進めることはしなかった。この本がウェ ブサイト上の逸話や短い物語に基づいていることは、二つのことから見て取れ る。まず、読み進むうちに話がいろいろな面白い物語の間を紆余曲折してゆっ たりと進み、一度通ったところにもう一度触れ直してまた別の金塊を掘り起こ したりもする。第二に、Hertzfeld は彼の Folklore.org サイトへの訪問者た ちが残したコメントを利用してこの本の物語に注釈を加えており、その中には 彼の記憶にある話と矛盾するようなものもある。実際、こうした行きつ戻りつ の語り口をもっと入れれば良かったのにと思う。なぜなら、あのウェブサイト にあるコメントの中にはかなり鋭いもの、辛辣なもの、あるいは特定の話をた だ盲目的に信じ込んでいるようなものも、いろいろと数多くあるのだから。 **ハッカーのヒーローは** -- この本にはヒーローもいるし、悪者もいる。 ヒーローを助ける「良い側」の人間たちや、悪者に付く「悪い側」の人間たち も、それぞれ何人かずついる。ヒーローは誰かといえば、それは Burrell Smith だ。彼は可笑しいほど奇人のハードウェアの天才で、Macintosh のマ ザーボードからどうすればもっとパフォーマンスを引き出すことができるか、 という問題に対して最も奇妙な、それでいて最も成功したアイデアの数々をひ ねり出した人物だ。彼はまた、初代の Mac に拡張ポートとアップグレード可 能な RAM を加えようと努力した人でもあり、これは実現はしなかったもの の、この努力そのもののためだけでも彼は Mac オーナーたちから不朽の尊敬 と愛情を寄せられる資格がある。 Jobs や、概念的には Mac の父親と言える Jef Raskin は、Mac が拡張スロッ トを持つべきでないという点で意見が一致していた。費用がかかり複雑度も増 す、というのがその理由だった。Smith は Jobs から、「Mac にスロットな ど、1個付けるのも無理だ」と言われた。けれども Hertzfeld はこう続け る。「Burrell は簡単には挫けなかった。このことについて Brian [Howard] と相談した結果、スロットと呼ぶ代わりにこれを“診断ポート”と名付け、製 造工程でテスト用機器を直接プロセッサバスにアクセスさせて製造エラーを診 断することができれば費用の節約になる、と説明することにした。」でも、こ んな誤魔化しも、技術マネージャの Rod Holt に見破られてしまった。「これ は本当はスロットだろう? 君たちは、スロットをこっそりともぐり込ませよ うとした訳だ。だが残念ながら、そんなことはさせない!」 何とも残念なことだ。ちゃんとしたスロットが装備されるまでには、私たちは Macintosh II の登場まで待たねばならなかった。そして、驚くなかれ、他な らぬ Burrell Smith 自身が創設した会社 - Radius という名の小さな会社 - が、そのスロットの素晴しい利点を利用した先進的なグラフィックカードを提 供し始め、このことがデスクトップ出版やイラストレーションの世界で Mac が先んじて卓越した地位を確立することのできた大きな力となったのだった。 (私が 1990 年代の初め頃に Kodak Center for Creative Imaging で働いて いた時、私の職場では少なくとも数十万ドルを Radius のカードやモニタに支 出していた。)Hertzfeld は彼のサイトで、あるコメントに対する答として、 現在では Smith はすっかり引退しており、何年も前に Radius 社を退職して からは業界の仕事から手を引いている、と述べている。 当時のチームのメンバーで、今はテクノロジーの領域からすっかり離れてし まっている人たちも多い。例えば Bill Atkinson は、長年密度の濃い仕事を してきたのを離れて、フルタイムの写真家になった。私は 1991 年に Bill と the Center for Creative Imaging で会ったが、彼は当時そこで John Sculley やその他大勢のデザイナー、写真家、イラストレーターたちと共に、 特別招へいデザイン研究員として滞在していた。(その時のことだった。ある Kodak 社員がひどくまずい出来のソフトウェアを John Sculley にデモしなが ら、どうしてキーボードコマンドがマウスコマンドより優れているかを説明し ているところを私が漏れ聞いたのは。その時 Sculley はたった一言“いや、 そうではない”と静かに答えたものだ。)Hertzfeld の描く Atkinson は、ど ちらかと言うと刺のある、物事を気にしやすい人間という印象だ。ただ、これ は Lisa における Atkinson の役割がほとんど無視されていることが大きいだ ろう。彼はもう一度のけ者にされるのは好まなかった、ということだろう。 もう一人「良い側」の人間を挙げるとすれば、Bud Tribble がいる。当時彼は メモリ管理のソフトウェアを書きながら医学を学びつつあった。(Tribble は その後 Apple を去り、後年 Eazel 社で Hertzfeld と一緒になり、その二年 後には Apple 社に復帰した。) **経営側の悪者は** -- ここで私が Steve Jobs と答えると、期待しておられる だろうか? いや、答は違う。 この物語での悪者役は Bob Belleville、彼は Hertzfeld が Apple にいた最 後の二年間、Mac の技術マネージャをしていた人物だ。Hertzfeld は Belleville に関してはあまり公平とはいえない扱いをし、結構一方に偏した、 嫌らしい人物像として描いている。彼が経営者としてふさわしい人物だったか、 力量が足りなかったかどうか、実際のところは私はよく知らないが、とにかく この本の中では、彼はあまり血の通った人間としては描かれていない。他の登 場人物は皆、たとえ Hertzfeld を怒鳴りつけている場面ではあっても、ちょっ と奇癖を持った人間、興味をそそられる人間として描かれているのだが。ただ 一人 Belleville だけが彼にとっては鬼門、手に負えない謎だったようだ。 Jef Raskin がこの本でかなり肯定的に登場するのも面白い。Raskin は、Mac が出荷された日よりかなり以前に Apple を去ってからもずっと Apple やその 他の人たちに働きかけて、Macintosh の核心となる概念を生み出したのは彼で あって、彼こそが Macintosh の概念的な父親であるということが、歴史の本 から消えないようにと努め続けてきた。1960 年代以来彼が著述し講演してき たさまざまなアイデアを、資金の支えの伴う一つのプロジェクトにまとめ上げ た点について言えば、Raskin はまさに中心的人物として前面に押し出される 資格がある。たとえ Jobs が彼の職を解いてその役割から外してしまっても、 また最終的に Macintosh が彼の全般的ビジョンや特定のハードウェアの選択 から外れるものになったとしても、彼の果たした役割の重要性は決して減るも のではない。 Hertzfeld の描く Raskin は楽しくて創造力も豊かな経営者で、横柄かつプロ フェッショナルな態度をもって、一つのチームを共通のユニークなビジョンの 下に結び付けることのできた人物だ。Raskin がいなければ、Apple の旗艦製 品は Lisa のままであり続け、そのまま順次改良が続けられていくのみで、革 命的な改良は決して生まれなかっただろうと Hertzfeld は振り返る。先頭に 立って Mac を成功に導いたのは Jobs であったが、それは良きにつけ悪しき につけ彼が Raskin のプロジェクトを引き継いで細かい管理を加えていったか らだ。スタッフやその他のリソースを集め、彼のレーザービームのような注目 を受け止め続けたのは、まさにこの Raskin のプロジェクトだったわけだ。 Steve Jobs は最終的に Hertzfeld の注目からは外れ、ペラペラの紙のように 戯画化されて登場するようになる。でも、Steve Jobs と共に働く者が知って おかねばならないのは、結局そういう Jobs だけで良いのだ。Jobs はスタッ フたちをとんでもない時間に働かせるし、最後のぎりぎりになってから変更を 加えたりするし、正気とは思えないような技術的決定を追い求めたりする。最 新のマザーボードのレイアウトを青写真の拡大印刷にして Smith が示して見 せた時、Jobs はこう言ったものだ。「この辺はとても綺麗だ... でも、ちょっ とここのメモリチップの所を見ろ。こいつは醜いぞ。線と線がくっつき過ぎて いる。」一人の技術者が誰もボードを見て鑑賞する人はいないと言うと、Jobs は即座に「私が見るのだ! 私は、可能な限り美しいものにしたいのだ。それ が箱の内側の部品であっても! 偉大な大工は、誰も見ないからといって戸棚 の裏側で木材の質を落としたりしないものだ。」と答えたという。(明らかに Jobs は一度も大工になったことがないようだ。)彼は、見た目に美しいボー ドを作るようにとチームに命令し、それがうまく行かない時には、チーム全員 が元の機能デザインに立ち戻って考え直さなければならないのだ。 もっと有名な話がある。Jobs は袋小路を追い求める性質があるのだ。例えば あの Alps 製の 3.5 インチフロッピーディスクドライブが良い例だ。幸いな ことに、Apple 内にも頭の切れる人がいて、こっそりと裏側で Sony との連絡 を絶やさずにいた。(最終的に 3.5 インチドライブを提供したのは Sony だっ た。)そのため、突然 Jobs が現われた時など、日本人の技術者をあわててク ロゼットの中に隠したりしなければならないこともあった。 その一方で、Mac を Mac をたらしめた開発の諸段階、ケースのデザインから その動作の細かい部分に至るまで、あらゆる場面で Jobs は数々の重要な決断 を下してきた。この男は、やたら首を突っ込むことは止めないだろうが、彼の エンジニアたちから最大限のものを引き出してきたのは確かだし、そういう性 格は今日に至っても保たれ続けているように見える。 Sculley が経営陣を入れ替えて、Jobs を名目だけは経営責任者として残した ものの、事実上 Jobs の会社への影響力を一掃してしまった後、 Hertzfeld を含め数人の Apple 幹部が Jobs と夕食を共にした時のことを Hertzfeld は 回顧する。この本の中で最も人間味をもって Jobs が描かれているのがこの箇 所だ。そこでの話からすると、Jobs はもはや二度と誰の手によっても解雇さ れるような立場にはなり得ないということが明白になったようだ。 Bill Gates も、悪者役の一人として現われる。しばしば彼はコヨーテの扮装 をして、言葉をねじ曲げ、商標やアイデアを奪い取るためのトリックを蓄えた 魔法の袋を使いながら登場する。 **Hertzfeld の旅路** -- ImageWriter のプリントヘッドに取り替えて使う Thunderscan スキャナヘッドがどうすれば高速かつスムーズに動作するか、そ の製造会社のために助言しつつソフトウェアを書いたり、Mac で複数個のプロ グラムを同時に走らせる初めてのコンテクスト変更ツールである Switcher を 開発したり、Hertzfeld がそういう活動をしていた時代のことが彼自身の目で 見た物語として語られる部分は、読んでいてわくわくさせられる。 私自身、初めての Macintosh Plus を買った時の興奮は今でも鮮明に覚えてい る。そして、RAM 増設のためのツールキット(静電気防止板、長尺 Allen ド ライバー、それにケースを開ける道具のセット)を買って、何と贅沢にも4メ ガバイトの RAM を装着してから、ケース内側に栄光に輝く製作者のサインを 見つけた時の感激を忘れることはできない。 Hertzfeld にも我欲が無いとは言わない。でも、彼が語る物語のほとんどは誰 か他の人たちについてのことだ。彼が自分自身を中心的人物として前面に押し 出す記述は稀で、そういう場面といえば皆非常に苦渋に満ちた事件についての ものばかりだ。たいていの場合、そういう事件には Steve Jobs が絡んでいて、 何かを彼に強要したり、あるいは彼の名目上の最高上司である Jobs の言うこ とを聞かないようにと他の人々が口を揃えて言うような立場に、彼を追い込ん だりする状況になっていた。 Hertzfeld は、その後彼が Radius 社に加わり、General Magic 社の設立に力 を貸し、それから多数の初期の Apple 開発者たちと共に Eazel 社に加わる、 というところにまでは至らない前の段階で、物語を終えている。この 20 年の 期間、彼に何が起こったのか、私たちには詳しくはわからない。そもそも、 Apple 社の全体的な興味の方向はこれら別会社のものと平行しているとは限ら ないからだ。それに、おそらく出訴期限法によれば、現なまの真実を(彼の目 から見た真実を)そのままに語ることを許されるのは、過去 20 年前まで、と 限られているのだろうから。 Pro にする理由(Audio Hijack Pro のこと) ----------------------------------------- 文: Matt Neuburg 訳: 羽鳥公士郎 Rogue Amoeba の Audio Hijack Pro は素晴らしいプログラムだが、開発者自 身のウェブページでは、その素晴らしさが十分に説明されていないように、私 には思える。考え方を難しくしているのは、Audio Hijack Pro が2つのニッ チを同時に占めているからだ。つまり、この製品は2つのきわめて異なったこ とをするのだ。だから、この製品について読んでいるときに、1番目の機能を 特別ほしいとは思わなかった場合、2番目の方はあなたの意識にも上らないか もしれない。しかし、この2番目の機能は本当にすごくて、私の知るかぎり、 ほかに例を見ない。 **1番目から順番に** -- Audio Hijack Pro の第1の機能は、簡単に書き表 せる。コンピュータが生み出すあらゆる音をサウンドファイルに録音するの だ。これがどう役に立つのかというと、コンピュータが時折発する音の中で、 あなたがファイルに録音したいと思うものがあるのではないか。たとえば、 RealPlayer で、ラジオ局の生ウェブ放送か、あるいは以前の番組の再放送か もしれないが、インターネットのストリーム放送を聞いているとしよう。 RealPlayer では、サウンドファイルは存在しない。再生を始めるには、小さ なファイルをダウンロードするが、これは実質的にはただの URL にすぎな い。実際の音は、ストリームとして流れていってしまう。しかし、その音はコ ンピュータから出てくるのだから、Audio Hijack Pro を使えば、録音でき る。同じように、DVD プレーヤで DVD を見ているときに、そのサウンドト ラックを録音することもできる。ほかの場合でも、あなたのコンピュータで何 らかのアプリケーションが音を発していれば、それを録音できるのだ。 Audio Hijack Pro は、圧縮されるものもされないものも含め、いくつかの標 準的なフォーマットのサウンドファイルに録音することができる。すなわち、 16-bit AIFF、24-bit AIFF、MP3、AAC、そして Apple の新しいロスレス (ALAC)フォーマットだ。それに加えて、音を生み出しているのが、アプリ ケーションでなくサウンドポートでもよい。だから、内蔵マイクロフォンや オーディオ入力ポート、また Griffin iMic や RadioSHARK のような「ブレイ クアウトボックス」やその他多くの洗練された機器につながった USB ポート が音を受け取っていれば、それも録音できる。たとえば、自分のために短い音 声メモを取りたいとしよう。そういうときは、Audio Hijack Pro を、内蔵マ イクロフォンから高圧縮の 32 kbps MP3 ファイルに録音するよう設定して、 コンピュータに直接話すだけでいい。音質とファイルサイズが極端に異なる例 としては、私のステレオにつながった Tascam USB box から 24-bit AIFF フォーマットへ、カセットテープや LP レコードのクラシック音楽をデジタル 化することもできる。 これがあなたの興味を引いたとしても、Audio Hijack Pro に 32 ドルも払う のは割に合わないとお思いかもしれない。32 ドルというのは大金ではないに せよ、より安価な代替品があるのだ。Audio Hijack の Pro でない弟、Audio Hijack は、たったの 16 ドルで、同じことができる。主な違いはといえば、 Audio Hijack は 16-bit AIFF ファイルにしか録音できない。サンプルレート は設定できるが、それ以外の変更はできない。それでも、AIFF は、編集する には最善のフォーマットだ。後から、iTunes や他の QuickTime を利用可能な プログラムで、AIFF から他のフォーマットにいつでも変換できる。だから、 その場で圧縮しながら録音できる機能というのは、それほどすばらしい機能で はないと考えたとしても、おかしくはない。加えて、Audio Hijack にも競争 相手がある。Ambrosia Software の新しい WireTap Pro(これは以前のフリー ウェア WireTap を置き換えるものだ)は、たった 19 ドルで、さまざまな フォーマットに録音できる。さらにフリーウェアの Jack OS X もある。ただ し、これには、サウンドファイルを生成するための他のアプリケーションが必 要で、設定も面倒だ。それに、コンピュータにやってくる音を録音したいだけ なら、30 ドルの Amadeus II のようなプログラムの方がよいかもしれない。 この製品は、音を録音して、編集し(雑音を除去したり、たくさんのエフェク トやフィルターを適用するなど)、Audio Hijack Pro よりもたくさんの フォーマットに、しかも少ないコストで、保存できる。 **プラグインを入れて** -- ここで Audio Hijack Pro の2番目の機能に注目 しよう。この製品は、録音しながら、音をデジタル的に処理することができる のだ。それにはプラグインを使う。いくつかのプラグインは Audio Hijack Pro に含まれており、またいくつかはすでにあなたのコンピュータに存在して いる(もちろん、ほかのものをインストールしてもよい)。実際、Mac OS X でもっとも知られていない秘密の1つに、たくさんの驚くほど強力なデジタル 信号処理プラグインが含まれているということがある。その中には、31 バン ドのグラフィックイコライザ、コンプレッサ、リミッタ、ハイパス・ローパス フィルタなどがある。あなたが GarageBand を使ったことがあるなら、これら のエフェクトを見たことがあるかもしれない。しかし、これらのエフェクト は、AudioUnits が利用可能な他のアプリケーションからも使うことができ、 それには Audio Hijack Pro も含まれるのだ。また、Audio Hijack Pro があ つかえるプラグインの種類は、AudioUnits だけではない。この製品独自の フォーマットは 4FX と呼ばれ、20 ほどの機能がそろっている。そのほとんど は、ゲインとバランスを調整するのに適している。加えて、LADSPA プラグイ ンも使える。これは Linux に由来するフォーマットで、フリーの LADSPA プ ラグインが多数あり、いくつかはプログラムに付属している。最後に、Audio Hijack Pro は VST プラグインを使うことができる。これも、商用のものやフ リーのものがたくさんある。 すばらしいことには、複数のエフェクトを同時に適用することができる。この 製品は、簡単なパッチボードとして働く。つまり、エフェクトを連続して適用 したり、平行させて適用したり、またはその両方を行うことができる。イン ターフェースは非常に効果的だ。縦横の格子があって、縦1列が1段の処理に 対応している。最初の列にあるすべてのエフェクトが平行に適用され、次に2 番目の列のエフェクトが適用される、というようになっている。あなたのコン ピュータから出る音は、あなたの耳に届く前、そしてファイルに書き込まれる 前に、エフェクトを通過する。それなので、録音している音にどういう効果を 加えているかをモニターできる。音を聞いているときには、ボタンをクリック するだけで、それぞれのエフェクトの効果を入れたり切ったりして、あなたが 加えている効果を識別することができる。また、エフェクトによっては、ゲイ ンやパラメータを調節して、いろいろ実験することもできる。 さらに、オリジナルを録音するときにはエフェクトをかける義務がないという ことを頭に置いておこう。最初にエフェクトなしで単純に録音し、あとでそれ を再生しながら、エフェクトを適用した新しい録音を作ることができるのだ。 実際のところ、最初に録音したのがあなたではないとしても、やはりエフェク トを適用できる。ということは、Audio Hijack Pro は驚くほど安価なリマス ター・ラボになるのだ。たとえば、私が昔のラジオ番組 Goon Shows の MP3 を手に入れたとしよう。それはそれでよいのだが、音を少し甘くして、圧縮に ともなう雑音を取り除きたいと思うかもしれない。そこで、MP3 を iTunes で 演奏しながら、その音を Audio Hijack Pro で「ハイジャック」して、 Excitifier と LowPass のエフェクトを適用する。音を聞きながら、エフェク トのパラメータをいじって、好みの音質にする、そうしたら、MP3 の最初に 戻って、Audio Hijack Pro でオリジナルと同じ音質の MP3 に録音するように 設定し、通して演奏する。演奏が終わったら、新しい MP3 の音質は少しよく なっているはずだ。(MP3 は不可逆圧縮だから、MP3 を別の MP3 に変換する と、通常は音質が落ちる。でも、この場合は、そもそも原音に忠実である必要 はないので、全体としての音質は向上する。)再び最高級の音質について考え るならば、LP レコードから録音した 24-bit AIFF を iTunes で演奏し、イコ ライザとコンプレッサを少し、最後にディザエフェクトを適用し、16-bit AIFF に録音すれば、あっという間に Audio Hijack Pro でオーディオ CD の マスターができる。(それに加えて、Audio Hijack Pro から直接オーディオ CD を焼くことすらできる。) もちろん、エフェクトを適用し、マスターを作成する方法は、ほかにもある。 Amadeus II のようなプログラムでは、オーディオの範囲を選択して、それに エフェクトを直接適用する。つまり、計算が行われて、オーディオが書き換え られる。Audio Hijack Pro のやり方の短所は、エフェクトがライブで適用さ れるということだ。音にエフェクトをかけるには、それを最初から最後まで再 生しなければならない。だから、エフェクトを適用するのに必要な時間は、そ の音の持続時間になる。しかし、Audio Hijack Pro のやり方の長所もまった く同じところにある。エフェクトがライブで適用されるということだ。これが 意味するところは、エフェクトが適用されているときに、それをモニターでき るということであり、その場で調節することすら可能だ(たとえば、ある部分 では、他の部分よりも少しだけ強くコンプレッサをかけたいと思うかもしれな い)。なにより、これほど簡単に複数のエフェクトを平行かつ連続して適用で きるアプリケーションで、Audio Hijack Pro ほど安価なものは、ほかには知 らない。 ** 音が聞こえるだけでなく** -- Audio Hijack Pro には、ほかにも機能や能 力が満載されていて、今までの説明ではそれらをほのめかしたことにもならな い。2つ以上のアプリケーションが同時に音を出力しているとき、それを(そ れぞれ別のファイルに向けて)録音でき、あるいは1つをスピーカで聴きなが ら、もう1つのアプリケーションを録音できる。ある時間が経ったら、録音を 自動的に止めることもできる。これは、あなたが電話に出ているあいだにサウ ンドファイルが巨大になってしまうことを防ぐのに役立つ。Audio Hijack Pro が特定のアプリケーションを特定の日時に録音するよう設定することもでき る。これは、あなたがジョギングに出かけているあいだに Car Talk の放送を インターネットラジオで録音するのに役立つ。録音しているときに作られる ファイルを、一定の時間ごとに、または長い沈黙のところで(たとえばトラッ クごとに分けるように)、複数のファイルに自動的に分割することもできる。 Audio Hijack Pro が録音を始めるとき、サウンドアプリケーションに対し て、特定のファイルを開くように(または AppleScript プログラムを走らせ るように)指示するよう、設定することもできる。だから、たとえば、 RealPlayer が自動的にお好みのインターネットラジオ局に切り替わるように 設定することができる。録音が終わったときに AppleScript スクリプトを走 らせ、録音されたファイルに後処理を施す(たとえば、iTunes の特定のプレ イリストに加える)こともできる。 Audio Hijack Pro ができることすべてを見通してみると、32 ドルというのは お買い得だと思う。このプログラムは、頻繁に改良されている。マニュアルに は改善の余地があるが、サポートはすばらしく、役に立つよう開発者によって 丹念に管理されているユーザーフォーラムもある。気の利いたデモシステムが あるので、購入する前に試用することができる。登録するまでは、プログラム は普通に動くが、10 分以上録音すると雑音が加わるのだ。ダウンロードは 3 MB に満たない。Audio Hijack Pro には、Mac OS X 10.2.7 かそれ以降が必要 だ。 TidBITS Talk/24-Jan-05 のホットな話題 ------------------------------------- 文: TidBITS Staff 訳: Mark Nagata 各話題の下の2つ目のリンクは私たちの Web Crossing サーバでの討論に繋が る。こちらの方がずっと高速のはずた。 **WireTap 対 Audio Hijack Pro 新スレッド** -- インターネットラジオのスト リーム音源や、その他のオーディオを Mac で録音するために使われる人気の プログラム2つを、読者たちが比較する。(メッセージ数 6) **ドメインネームの長期メンテナンス** -- 現在のところ、ドメイン名の保守管 理は技術に精通した人でなければできないが、インターネットの配管工事に熟 練した人でなくても何とか使える部分的解決策はある。(メッセージ数 11) **Mac とテレビの出会い** -- コンピュータでテレビ番組を観るというのは、何 を意味するのだろうか? そうすることで、何か利点があるのだろうか? (メッ セージ数 7) **Mac mini** -- Apple の新製品 Mac mini に関する議論は続く。(メッセージ 数 93) **有り余った Apple の手持ち現金** -- 前四半期に Apple が記録的な好業績を 残したことで、Apple が Mac mini をさらに値下げするのではないか、赤字を 覚悟で市場シェアの獲得に向かうのではないか、という憶測が飛び交う。(メッ セージ数 18) $$ 非営利、非商用の出版物は、フルクレジットを明記すれば記事を転載できま す。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証は ありません。告示:書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者 の登録商標または権利です。 お知らせ:TidBITS(英語版)に関する情報(各種 ML 購読、バックナン バー、全文検索など)は、TidBITS ホームページにお越しくださいこの他にも多くの情報があります。TidBITS ISSN 1090-7017 原著者への感想や寄稿は 宛て英語で メールをご送付ください。 TidBITS(日本語版)に関する情報( ML 購読、バックナンバーなど)は、 日本語版ページ をご利用 ください。日本語版と日本語翻訳に関するお問い合わせ、コメント、激励 は、このメールにご返信 ください。 ------------------------------------------------------------------- .